人と動物との触れ合いが人の健康増進に役立つことは古くから知られており、多くの動物がこの目的に利用されてきました。しかし人にも動物にも個性があるので、特定の動物があらゆる人に有効で、あらゆる動物が特定の人に有効に働く、ということではありません。
アニマルセラピーでは、その患者さんの症状改善に適した動物を選択することが極めて大切な作業です。
犬
アニマルセラピー活動の内、犬(セラピードッグ) を介在させて実施されるプログラムを特にドッグセラピーと呼んでいます。
一定のトレーニングを終えたセラピードッグを介在させ、高齢者や精神的なさまざまな障害を持つ人々のリハビリテーションを目的に実施されます。
犬は人に対する親和性に優れており、セラピー動物として最も扱いやすく、セラピー対象者にも受け入れられやすいといえます。
大は人との関わりが最も長い動物で、最も身近な動物です。セラピー対象者を含め、幼少期まで遡れば、犬との触れ合いはほとんどの人が経験していることでしょう。
海外ではアニマルセラピーを推進する複数の団体が、動物の性格や訓練の程度などセラピー動物としての適性を評価するスクリーニングテストを行なっており、日本でも類似の活動が始まっています。
一定の適性をもったセラピードッグを介在させたドッグセラピーは、高齢者や精神的なさまざまな障害をもつ人々のリハビリテーションや身体機能の回復、症状の緩和に効果をあげています。
猫
猫は犬に次いで人に身近な動物です。
猫の家畜化の歴史は数千年にも及びますが、人に対して必ずしも従属的な動物であると言うことはできません。
猫は人に対し、犬ほどの親和性を示しません。犬と異なり、対面した人に積極的に関わろうとする意欲が低く、無関心な状態を装い、その先は相手次第と言う態度であるため、猫はセラピー動物として万人に向くとは言えません。
けれど、人との間に微妙な距離を保ちながらも、適度な親密さを示す点で、神秘的で知的な動物と言えます。この猫独特の習性が、ある種のセラピー対象者にとっては魅力的に写ることもあります。
俗に犬派、猫派と言われますが、両者の好みの差は人が高齢になるほど顕著になっていくようです。犬に恐怖感をもつ高齢者も少なくない事情から、猫がセラピー動物として選ばれることも多くあります。
セラピー動物として猫を起用する場合は、個々の猫の性格を観察し、その猫のもつ特性の範囲内で活用すべきでしょう。
猫は未知の場所に連れ出すと動きが鈍くなり、一見扱いやすい印象を受けます、この状態は猫にとっては緊張した状態であり、扱いを誤ると攻撃的な態度に転じることや、逸走の可能性もあります。
猫は何の目的にせよトレーニングには向かない動物と言えますが、リードを付けて誘導できることや、セラピー対象者の膝に伏せた状態で静止したり、撫でられることなどは最低限できなくてはなりません。
また、猫は他のセラピー動物と接触することにも慣らしておく必要があります。
馬
馬は乗馬療法(ホースセラピー)に用いられます。
乗馬療法は、乗馬による心身機能の回復効果によってセラピー対象者の生活の質を向上させることを目的に行われます。
文化的に馬と人との関わりの強い欧米で古くから見られる活動で、欧米における乗馬療法は、治療プログラムとして早い時期から確立していたと言えます。
麻痺を伴う神経障害の回復にも乗馬が有効とされた後、乗馬による健康の増進法やその効果については多くの事例が伝わっています。
乗馬では馬の歩行のリズムが骨盤から人体に伝わります。人が馬上で馬の歩行リズムに合わせてバランスをとるために、動員する神経や筋肉の動きは、人が歩行する時と同様の刺激を人体に与え、心身のバランスを平衡に保つ効果があります。
人が自分よりも大きい動物に触れる機会は日常生活ではほとんどないのが普通ですから、馬との接触が心身両面にもたらすセラピー効果は大きいと言え、同時に精神面の安定を回復する効果を期待したセラピーには、馬は最適な動物であると言えるでしょう。
乗馬以外にも、馬と共に生活し、飼育の世話をする年少者を対象にしたプログラムでは、心の傷を癒すなど高次の教育的効果が認められています。
ウサギ
セラピー動物としてのウサギには、他の動物にはない利点があります。犬や猫を恐れる高齢者や子供でも、ウサギに対しては「かわいい」「優しい」というイメージをもっているからです。
実際に撫でた時のウサギの感触は柔らかく、猫に比べるとストレスに強く、猫ほどの早い動きもしません。人に媚びるような行動はしませんが、人を特に嫌がることもありません。
ウサギは衛生管理の点で犬よりも困難な面がありますが、セラピー動物としての優れた点は多いと言えます。
ウサギの存在は猫や特に犬のストレスを高めるので、セラピー動物としてウサギを使う場合は、犬とのスペースの共用は難しいでしょう。
イルカ
アニマルセラピーの一つにイルカセラピーと呼ばれるものがあります。
アメリカで盛んな活動で、水中に入りイルカと共に泳ぐことによって自閉症やうつ病など精神疾患の症状緩和を目指すものです。
イルカを水族館に類似した設備で飼育しているケースと、野生状態のイルカを利用するケースがあります。
飼育されているイルカは共に泳ぐばかりではなく、人と触れ合うことも可能な場合が多いものです。ちなみに野生状態のイルカは原則的に触れることはできません。
一般社団法人国際家庭犬トレーニング協会
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