「マテ」はそもそも犬の欲求に逆らい、行動を中断させ、人に服従させることですから、犬にとっては難しいものなのですが、いったん習得させれば非常に有効なトレーニングといえます。
「マテ」は応用の範囲が広く、重要なトレーニングの一つですので、あらゆる機会をとらえて徹底的に反復練習をすることが肝心です。
このトレーニングを成功させるためには、常にトレーナーが犬より優位にあるということを犬に認識させる必要があります。また、トレーニングされる犬自身が、「トレーナーは必ず戻ってくる」という確信をもたなければなりません。
「マテ」の練習
「マテ」の視符は、右手の平を広げて、鼻鏡部を圧するように示します。声符は「マテ」です。
「マテ」の練習は、犬の年齢と能力に合わせたペースで行います。練習の初期においては、常に犬にリードをつけた状態で行い、犬が動いてしまった場合には、体に触らずリードで修正します。
いろいろな「マテ」
子犬に対する「座ってマテ」
子犬に「スワレ」の姿勢をとらせます。トレーナーは横にしゃがみ、犬を励まし褒めます。10~15秒くらいそのままの姿勢を取らせます。
犬が動いたり、立ち上がろうとしても、力で押さえつけてはいけません。そのような場合は「スワレ」を停止し、犬をリラックスさせ、再度やり直します。
犬が静かに1分間「座ってマツ」ことができるまで、徐々に時間を延ばしていきます。トレーナーは、犬が座っていることに自信が持てたと感じるまで、犬の横にしゃがんでいるようにします。
次に犬を「スワレ」の位置に置き、トレーナーは数秒立ち上がり、またしゃがみます。そして、徐々に立ち上がっていく時間を延ばしていきます。この時、犬を褒め、励まし続けることを忘れてはいけません。
次に右足を踏み出し、すぐに犬の正面に回ります。この時、トレーナーの背を犬に向けるのではなく、必ず犬と対面し、声符とトレーナーの要求が伝わるようにします。
次に一歩下がり、犬の元へ戻り、しゃがみ込んで褒めます。
10歩ほど下がれるようになるまで犬に話しかけ、励ましながら徐々に歩数を伸ばしていきます。
この練習法は犬にトレーナーは必ず戻ってくるという確信を持たせ、待つことへの自信を与えることに役立ちます。
トレーニングを効果的に行うには、足を踏み出す前に犬の周りを回り、犬を褒める前に、再び犬の周りを回ることを繰り返す「儀式」でスタートします。これを行うことにより、犬はトレーナーが犬の周りを回る儀式が終わるまで「マツ」ことを学びます。
そして、徐々に「マテ」の時間を延ばしていきます。
食事を利用した「マテ」
犬に「スワレ」を命じ、食事を食べようとした時、手のひらを鼻先に向け、軽く制止し、「マテ」をかけます。このトレーニング方法は犬をじらせることになり、可哀想に思われますが、犬が自分の欲望をコントロールしてトレーナーの指示に従うという重要な意味を持ちます。
長い引き紐を利用した「マテ」
犬に長い紐をつけて座らせ、紐を犬の後方にある木などに回し、その先をトレーナーが持ちます。犬がトレーナーの方に近寄ろうとした時、「マテ」の声符を与え、紐をぐんと引きショックを与えます。この繰り返しにより、犬が「マテ」を充分に理解したら、紐なしでも練習を繰り返します。
見えないところで「マテ」
トレーナーが犬の視界から消えた場合でも「マテ」が続けられるように練習します。犬の不安感が極度に達することを防ぐために、トレーニングは犬が日常慣れている場所で行うことが必要です。このトレーニングでは、犬の視界からトレーナーが見えなくなっても、トレーナーからは常に犬が見えていなくてはなりません。
一般社団法人国際家庭犬トレーニング協会
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