「モッテコイ」(物品持来)のトレーニング

どの犬も幼犬期には動くものを追い、捕らえ、運搬する習慣を持っています。しかし、全ての犬が、成犬になってもこの持来欲を持ち続けているというわけではありません。

「モッテコイ」のトレーニングにおいては、一般的に犬は占有欲も強いと考えられるので、基本動作の「モテ」はすぐにマスターさせることができます。しかし占有欲の強い犬は、当然、放すこと(「放せ」)を嫌がる傾向が強いものです。

持来欲の多少に関わらず、「モテ」と「放せ」は、このトレーニングの重要な基本動作であるため、確実にマスターさせる必要があります。

物品持来の視符と声符


視符は、人差し指で持来すべき物品を指します。
声符は「モッテコイ」です。

開始する年令


モッテコイのトレーニングを始めるに当たって重要なことは、トレーニングを開始する年令です。

幼犬や年少の犬に対してのトレーニング


幼犬や年少の犬では、遊びを交えたトレーニングから入るのが一般的です。しかし、遊びを中心としたトレーニング方法のみを長期間にわたって続けると、犬が好きなものしか持って来ないという問題に結びつきやすいので、注意が必要です。

服従競技会では、数多くの種類の中から、時には扱いにくい物品を持って来なければならないので、犬はそれらあらゆる物品を持来することをトレーニングされなければなりません。

幼犬の欲求と行動を理解することはトレーナーの力量に大きく左右されるものであり、トレーニングの科目の中には、残念ながら遊びのみで教えられるものはありません。

このため幼犬のトレーニングを開始する際に、最初からこのトレーニングの基本を取り入れることが望ましいと考えられます。

また、モッテコイのトレーニング方法は、後に高等な科目を教える段階でも役に立ちます。

成犬に対してのトレーニング


このトレーニングを成犬に対して行う場合には、ある程度の強制を伴った手法を採用すべきです。

成犬に対して強制力を使わずに、遊びながらトレーニングをする方法で純粋にモッテコイを教えるのは、熟練したトレーナーにとっても極めて難しいことといえます。

特にトレーニングする成犬に望ましくない持来の習慣がついている場合には、幼犬に対するような遊びを交えた方法では決して改善されないでしょう。

トレーナーのストレスと、犬の困惑を避けるためにも、最初から正しいトレーニング方法を選び、開始することが重要です。

「コイ」のトレーニング


「モッテコイ」のトレーニングは、「スワレ」、「モテ」、「コイ」、「前へ」、「終了」の5つのトレーニング科目を組み合わせたものです。

このトレーニングの対象となる犬は、「コイ」を喜んで正確に行うことができなければなりません。「コイ」に含まれる各要素は、持来トレーニングの必須部分となっています。

トレーニングに際しては、トレーナーの忍耐と繰り返し、充分に褒めることなどが重要になります。また、声の調子は最も重要となります。

また、このトレーニングには犬の全注目をトレーナーに向けることが必要となります。そのため、開始にあたっては、犬の気が散ることのない静かな場所を選びます。その後、犬がある程度習得した時には、大勢の人や犬の中で練習するようにします。

「モッテコイ」のトレーニング


トレーニングを開始するにあたっては、物品(ダンベル)をくわえることを、犬が完全に理解し、受け入れていることが必須ですので、先にダンベルをくわえさせるトレーニングを行ってから始めるようにします。

①犬を脚側に停座させ、ダンベルに注目させます。

②左手で犬の首輪を保持したまま、ダンベルを足元に置きます。

③「モテ」の声符とともに首輪を離し、犬にダンベルを取らせます。

④右足を一歩後退し、「コイ」の声符をかけます。

⑤犬を左右に従わせます。

⑥左足を引くと同時に犬を引き込みます。

⑦対面に停座させ、両手でダンベルを受け取ります。

⑧犬を脚側に誘導します。

⑨犬の名を呼び注目させます。

⑩ダンベルを遠方に投げます。

⑪「モッテコイ」の声符を与えます。

⑫犬をダンベルに向かわせます。

⑬犬はダンベルを回収し、

⑭トレーナーの対面に停座します。

⑮「放せ」の指示でダンベルを受け取ります。

⑯モチベーターを与え、充分に遊ばせます。


一般社団法人国際家庭犬トレーニング協会
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