「ヤスメ(休止)」の姿勢は、 犬が腹ばいになって、腰をくずして後ろ足を横に出した状態です。
これは「フセ」の体躯を左右どちらかにくずした姿勢であり、犬にとって最も楽な体勢といえます。「フセ」の姿勢の長時間の継続は犬に苦痛を与えてしまいますので、犬を単独で長い時間待機させなければならない場合には、この「ヤスメ」を覚えさせておくと良いでしょう。
ただ、「ヤスメ」の姿勢は、犬にとっては突発的な出来事に対応できる体制ではないため、他の犬がいる場所や、他人が近くにいる場合には、容易に「ヤスメ」の姿勢に入ろうとはしません。
そのためこのトレーニングは、犬にとって誘惑の少ない静かな環境で開始する必要があります。また、トレーニングを始める前に、「スワレ」「フセ」「マテ」を完全に習得していることが必須条件となります。
トレーニングに際して、もし犬のもとから離れることに少しでも不安がある場合には、10メートル以上の長いトレーニング用のリードを使用します。
「ヤスメ」の視符と声符
ヤスメの視符は、人差し指で犬の腰部を指します。
声符は「ヤスメ」です。
「ヤスメ」のトレーニング
「スワレ」「マテ」を完全に習得させてからトレーニングに入ります。
①左脚側に停座させ、「フセ」を命じます。
②「ヤスメ」の声符を与えながら、短く持ったリードを腹部の方に引きます。左手は腰を押し、くずさせます。
③この姿勢を習得したら、「ヤスメ」の声符と腰部を指す視符で姿勢が作れるようにします。
④声視符でヤスメが出来るようになったら、「マテ」の声符を与え、徐々に犬から離れます。
⑤時々物陰に隠れ、犬の視野からトレーナーの姿が完全に消えても冷静に待てるよう根気強く教え込みます。
⑥犬が動きそうになったら、物陰から出て「イケナイ・マテ」の声符で体勢を維持させます。
⑦一定の時間「ヤスメ」の姿勢で待つことができたら、犬の居所に戻り、犬の周りを一周して脚側停座させ、このトレーニングが終わりであることを知らせます。
気をつけておくべきことは、この「ヤスメ」の姿勢から犬を呼び寄せるなど、他の動作に移らせるトレーニングを行わないようにすることです。必ず、「ヤスメ」を命じた者が犬の元に戻り、脚側停座をさせてから終了するようにしましょう。
「吠えろ」と「静かに」
犬には「静か」という概念がありません。そのため、「吠えさせるのを止めること」が「静かに」のトレーニングになります。
ただ、災害救助犬や警察犬など、吠えて事態を人に知らせる作業犬を除き、犬に吠えることを奨励する飼育状況自体が少ないと考えられますので、一般的には吠えさせないトレーニングの要望のほうが多いでしょう。
犬に「静かに」を理解させる
「静か」という概念がない犬に、静かにする状況を理解させるのは容易なことではありません。
「静かに」を「吠えないこと」だと理解させるには、いったん「吠える状況」を作り出して、これを「禁止する」という手順を踏むトレーニングを行うしかありません。つまり、「吠える」「吠えない」を自由にコントロールすることができれば、「静かに」のトレーニングは完成したこということになります。
多くの一般家庭では、犬が吠えるたびに、吠えることを止めさせる時に「静かに」の声符をかけることがよくありますが、実際の状況を見てみると、犬は吠えることを止めず、逆に「吠える原因が無くなるまで吠え続けている」ということがよくあります。
このような場合、犬にとっては、「静かに」の指示が、実は「吠えろ」と理解されている可能性があります。
人が大きく甲高い声で発する「静かに!」「シー」などの言葉を、犬は「人間の吠え声」として聞いていて、ますます興奮して吠え続けるというわけです。
「吠えろ」のトレーニング
「ホエロ」のトレーニングでも、他のトレーニングと同様に、命令を与えて、犬がそれに応じた時に褒めるという方法をとります。
ただし、吠えることで褒められる状況は、一歩間違うと問題行動としての「吠える」ことをエスカレートさせてしまう可能性もあります。ですから、褒めるタイミングやモチベーターを与えるタイミングを充分に考慮し、「静かに」することに重点を置いてトレーニングを進めることが大切です。
一般社団法人国際家庭犬トレーニング協会
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