「嗅覚識別」のトレーニング

すべての犬は、嗅覚によって物品を区別する能力を持っています。散歩の途中で棒切れを投げてみると、周囲にいかに多くの棒切れがあっても、犬はたいした努力もせずに、常に投げられた棒切れを持って戻って来ます。犬の嗅覚による識別能力は、人間のそれよりも遥かに大きいのです。


嗅覚トレーニングにおいてトレーナーは、自分には出来ないことを犬にさせなければならないことになります。犬の先天的で自然な能力である識別の方法そのものを、トレーナーが犬に教えることは出来ません。トレーナーに出来ることは、見つけて欲しい臭いを、犬がトレーナーの指示で見つけだすことを教えることです。

このトレーニングでは、犬の生まれ持った自然な行動を再度利用することになりますが、強制による方法が使用できないので、犬が楽しみ、望む方法で教えなければなりません。出来るだけ自然な形で教え、犬が間違わずに正しく行った時には褒める状態を作り出し、犬を喜ばせ、自信をつけさせます。

2つのトレーニング方法


嗅覚識別を教えるには、2つの方法があります。

1つは「褒め、遊びながら」を基本にトレーニングする方法、もう1つは「食物を使用すること」を基本とする方法です。この場合、どちらにするかはトレーナーの好みではなく、犬に適した方法を選択することが重要です。

褒め、遊びながらトレーニングする方法は、社交性に富み、大胆な性格の犬に適しており、食物を使用する方法は、静かでシャイな犬に適しています。

低いクラスのテストでは、犬はトレーナーの匂いを見つけることが目的であるので、比較的トレーニングはし易いといえます。犬は共に暮らしている家族の臭いは、臭いそのものを教えられていなくても見つけることが出来るからです。

しかし嗅覚識別トレーニングの真の目的は、トレーナーの匂い物質を探すことではなく、サンプルとして示された臭いと同じ匂いの物質を探し出すことです。その目的を達成させるためには、トレーニングの初期段階から、常に布についたトレーナーの匂いを嗅がせるようにすべきでしょう。

初期のトレーニング


トレーナーの匂いを染み込ませた布を、座らせた犬の目の前に差し出し、頭を少し上げたまま、布を犬の鼻孔の上にかけます。

犬を5秒ほど座ったままにし、布を通して呼吸させ、その後布を取り除きます。

このトレーニングは、段階を経て、徐々にゆっくりと教えていきます。そして、犬が間違った布を取り上げた時に、決して叱ってはなりません。犬が、人間には分からない理由で「正しい布」であると思っている場合、混乱させることになるからです。

嗅覚識別のテスト


①試験官はトレーナーの匂いのついた布をピンセットで受け取り、布の列の、任意の位置に置きます。

②犬には布の列が見えないようにして、トレーナーの匂いを犬に嗅がせます。

③犬に布の列を示します。

④トレーナーの命令で、犬は布の列に向かいます。

⑤犬はトレーナーの匂いの布を見つけて持ち帰ります。

嗅覚識別のトレーニング


①あらかじめ臭いのないダミーの布を数枚並べておきます。

②犬には布の置かれた場所を見ないように逆方向を向かせておき、犬にトレーナーの手の匂いを嗅がせます。

③犬に布の方向を示します。初期には「見つけて」などの声符を用います。

④トレーナーの命令により、犬は布の列へスタートします。

⑤犬は布の列の中から、トレーナーの臭いの布を見つけます。

⑥犬はトレーナーの臭いの布を、トレーナーの元へ運びます。

⑦トレーナーは、対面停座した犬から布を受け取ります。

⑧充分に褒めます。この時、犬に達成感を与えるようにオーバーに褒めることが望ましいでしょう。

⑨モチベーターを与え、布を取り上げます。


一般社団法人国際家庭犬トレーニング協会
わんわん相談員の詳細はこちら

SNSでもご購読できます。