アニマルセラピー活動は実施の方法によって、施設飼育型、施設訪問型、在宅飼育型、在宅訪問型などに分けられますが、実施形態によって効果に差があったり、それぞれに問題点が生じることもあります。
施設飼育型
アニマルセラピーの発祥は施設飼育型であったと考えられています。
高齢者介護施設での動物飼育によって、高齢者の気力が向上したという例や、各種の療養施設で動物飼育が患者の症状の軽減に役立ったという報告は少なくありません。
海外では精神的、身体的な外傷を受けた人の精神療法や、自閉症の子供の情操教育のために、広い敷地に多くの動物を飼育して症状改善に役立てている施設が多く見かけられます。
同様の趣旨で、親からはぐれたり、 けがをした野生動物の手当てをして野生に戻す活動なども行なっており、顕著なセラピー効果が得られています。
刑務所でも同様の試みがされており、囚人たちの極度な抑うつ状態が改善に向かい、自殺の試みが減り、信頼関係が改善されたといった報告がされています。
アニマルセラピーの効果は速効性があるものではないので、セラピー活動は持続して行うことが望ましいと考えられています。
施設訪問型活動では効果が限定的にならざるを得ず、事情が許せば施設内で人と動物が共に生活する形が理想です。
動物を施設が飼育する場合と、入所者個人が飼育する場合とで管理の方法は異なります、施設飼育型では人と動物との触れ合いが継続的に行われることで、高いセラピー効果が期待できます。
動物が嫌いな人も関与せざるをえない、スタッフの労務負担が増えるなどのマイナス面も考えられますが、飼育スペース、衛生管理、費用負担、動物福祉などの諸問題がクリアできる場合には、施設飼育型はアニマルセラピー活動の理想の型であるともいえます。
施設訪問型
ボランティアが動物を伴って施設を訪問する方法で、 現在最も事例の多い活動形能です。高齢者介護施設、精神科病棟、心身障害者施設、ホスピスなどを訪問対象とする例が多くあります。
動物との触れ合いの頻度という点では、施設飼育型に及びませんが、訪問型であることによる利点もあります。動物飼育や健康管理の負担をボランティア側が負うことで、施設側が免れるものも多いため、導入しやすいのが特徴です。
施設訪問型で最も配慮が必要となるのはセラピー動物の健康状態の管理です。施設への動物持ち込みに際しては、人畜共通感染症や寄生昆虫の伝播に細心の対策が必要で、訪問直前の健康診断も欠くことは出来ません。
動物の適性に応じた取り扱いができることに加え、高度な医療知識を習得するなど、訪問ボランティアに求められるものは多いといえます。
医療や介護施設において施設訪問型アニマルセラピー活動が定着するためには、 セラピー動物の飼育者を中心としたボランティア組織が多く育つことも必要です。
在宅飼育型
在宅飼育型とは、一般家庭で動物を飼育することを指します。盲導犬、聴導犬、介助犬など身体機能障害者が飼育する介助動物は、この範疇に入ります。
介助動物は飼育者の生活の質の向上に貢献していますが、動物は単に道具ではなく、介助動物と飼育者の精神的な絆が重要な要素となっています。
家庭で飼育される動物は、対人関係が希薄になりがちな少子化社会の子供達の情操教育にも有用な存在といえます。
在宅飼育型の良い点は、飼育者に合った動物を選ぶことができ、動物との結びつきが強いことです。反面、この関係は個と個の関係に陥りやすく「癒される」ことだけを考えた飼育は健全とは言えません。
また、「動物の一生に責任が持てるか」という終生飼育の責任についても慎重に考える必要があります。やがて来る動物の「死」を正面から受け止めねばならないなど、動物との絆が強いが故に、深刻な「ペットロス」状態に陥ることも考えられるからです。
一般家庭でセラピー効果を前提としてペットの飼育を始めるケースは少ないと思われますが、結果としてペットを飼育する人が相応のセラピー効果を享受していることには間違いないでしょう。
在宅訪問型
セラピー対象者の住居にボランティアが動物を伴って訪問する方法です。
病院や施設に入所するほどの身体状態ではないけれども、動物の飼育は困難という高齢者は多いものです。在宅訪問型の利点は、人との関わりが少ない高齢者が、自分では飼育することができない動物と触れ合えることでしょう。
また在宅訪問型は、ボランティアと高齢者の関係が他のどの形態よりも濃いものとなり、そのためセラピー効果はボランティアの使命感や人間性に大きく左右される傾向があります。
この先、 一人暮らしの高齢者はますます増加することが予想されていますので、在宅訪問型のセラピー活動は、残念ながら効率が良いものとは言えないのが現状です。
一般社団法人国際家庭犬トレーニング協会
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