カウンセリングにおける沈黙時の配慮

カウンセリングの進行中、双方の会話が途絶え、 「沈黙」 状態になることがあります。

この沈黙が話題の区切りや円満な会話の後に続く場合は、双方ともに苦痛に感じられることはなく、次のテーマに移って対話を進めることができますが、不本意な質問や触れたくない話題、または不快な感情のために言葉が出ない場合の沈黙は、双方が苦痛に感じられ、緊張感が高まるものです。



この時、沈黙に耐えきれなくなったカウンセラーが緊張感を払拭しようとして不用意な発言をすると、対話が望まない方向に転じてしまうことがあります。

苦痛に感じられる沈黙は、カウンセラーが対話のペースを早めている場合に起こりやすいものです。カウンセリングは、カウンセラーのペースで進めてはなりません。相談者が自分の考えを整理し、悲しみや怒りの感情から回復するために必要な時間を充分に取ることが大切なのです。

相談者が高齢者である場合の配慮


ペットの喪失が飼育者に与える影響の大きさは、飼育者が高齢であればあるほど大きくなると考えられます。高齢者がペットを飼育することによるメリットは大いにありますが、同時にペット喪失時のダメージも大きいものです。

高齢者の場合には、飼育者の生活ペースがペット中心になって維持されているケースが多く、精神的な支えであったペットを喪失した高齢者が心身両面に受けるダメージは、カウンセラーが想像する以上に大きいのです。飼育者が独り暮らしである場合にはなおさら影響が大きく、ペットの喪失によって日常生活に支障をきたすことも少なくありません。

飼育者のペットに対する依存の度合いが高ければ高いほどペットロスの症状は重く現れます。そのため相談者が高齢である場合には、カウンセラーは特別な配慮をもって慎重に進めなくてはなりません。

多くの場合、高齢者は積極的に若年世代に語りかけようとはしません。年齢差が大きいカウンセラーにも容易に心を開くことはありません。そのため高齢者に対するカウンセリングでは、まず人的な信頼関係の構築に充分な時間をかけることが重要です。できるだけゆるやかな回復のプロセスを設定し、高齢者が無理なくクリアすることを確認しながら進めていくべきでしょう。

また、カウンセラー側の経験則に基づいた定型的な面談に終始することも高齢者の孤独感や不安感を増幅し、ペットロスの症状を悪化させる場合があるため注意しなければなりません。

家族間の問題に介入しない


カウンセリングを進める上で、飼育者の家庭環境についての情報は欠くことができないものですが、飼育者の家庭に関する質問はカウンセリングに必要な最少の範囲にとどめるべきでしょう。

ペットが相談者を含む複数の家族によって飼育されていた場合には、ペットの死によって、家族全員が多かれ少なかれ動揺していると考えられます。また、家族それぞれがペットの死をめぐってさまざまに憶測し、それぞれに異なった見解を持っている場合が多いようです。一般的には、家族それぞれの見解と相談者の意向は一致しないケースが多く、カウンセラーはこの領域に立ち入るべきではありません。

カウンセラーは、相談者とカウンセラーとの関係よりも、相談者と家族の関係がより重要であることを忘れてはなりません。相談者と家族の関係に好ましくない影響が及ぶような問題については、断定的に意見を言うことを避け、相談者と家族が助け合うことによって悲嘆が克服できるような助言に徹するよう心がけます。家族間の問題にはカウンセラーは介入するべきではなく、相談者と家族で対話することを勧めるべきなのです。

また、カウンセラーと相談者が旧知の間柄であることは望ましいことではありません。相談者があらかじめカウンセラーの人的背景を把握した上で行う質問、カウンセラーがあらかじめ相談者の人的背景を把握した上で行う助言は、有効性が疑わしいと言えるでしょう。

カウンセリングという特殊な状況下では、旧知の相手の話を素直に受け止めることは困難と言わざるをえず、双方の間柄が深いほど対話の真理に誤差が生じます。親しいからといって何でも相談できるわけではありません。むしろ他人だからこそ話せ、他人だから深い相談ができることも多いのです。


一般社団法人国際家庭犬トレーニング協会
わんわん相談員の詳細はこちら

SNSでもご購読できます。