カウンセリングトーク

カウンセリングトークの基本は「相談者への質問」です。

カウンセリングにおいて相談者へ質問することは、カウンセラーが相談者の情報を得るためだけではなく、相談者自身が相談の要旨を整理して認識することを手伝う意味が大きいのです。



適切な質問は、それまでの話題に区切りを付けて、感情的になりすぎた相談者をいったん落ち着かせるのにも効果があります。

質問したい事柄が特に無くても、「あなたはどう思いますか?」と相手に疑問を投げかけることで、相談者の緊張感の持続をはかることが可能です。

質問をする時、カウンセラーは相談者のボディランゲージに注目している必要があります。「ノー」と言いながら、体が「イエス」と言っていることはしばしばあります。「言っていること」ではなく、「していること」を信じるのがカウンセリングの基本です。

「閉ざされた質問」と「開かれた質問」


質問には「開かれた質問」と「閉ざされた質問」があり、会話の状況に応じて使い分けます。

閉ざされた質問とは、「はい」「いいえ」で答えられる質問のことです。ロの重い相談者や、話に行き詰まった時の打開策として効果的です。「はい」か「いいえ」で答えられるために、返答する側の心理的な負担も軽く、カウンセラーが知りたい事柄について明確な答えが帰ってきます。しかしあまり多用すると相談者は尋問されている気分になるので、開かれた質問を適度に織り交ぜて使うことが望ましいといえます。

開かれた質問とは、「~はどうですか」や「~をどう思いますか」というような、相手が自由に回答できる質問のことで、この質問により、相談者の考えや感情を引き出すことができます。的確な情報が得られる、相談者自身の言葉が聞ける、カウンセラーの先入観を排除できるなどのメリットがあります。「最近どうですか?」というように、対話の冒頭に使うとよいでしょう。

開かれた質問は相談者が話したいことを自由に話せるので良いのですが、話が脱線したり、話し下手な人にとっては質問されること自体が苦痛な場合もあります。「最近どうですか?」と質問を投げかけても、「まあまあです」「普通です」と答えたり、「どう思いますか?」と聞いても、「さあ」「別に」と答えるような相談者には、閉ざされた質問を用いるほうが望ましいといえます。

カウンセラーは日頃から閉ざされた質問を開かれた質問に、開かれた質問を閉ざされた質問に言い換える練習をしておくとよいでしょう。

相談者の気持ちに焦点を置く


「何が原因ですか?」「理由は何ですか?」 「なぜですか?」 のような質間は、事実を退求することになり、相談者に強い心的圧迫をかけることがありますので、気をつけなければなりません。

「何が原因だと思いますか?」 「理由は何だと思いますか?」のように、事実の追求ではなく、あくまでも相談者の気持ちに焦点を置くことを忘れないようにしましょう。

カウンセリングは一緒に考えるもの


相談者がカウンセリング中に 「どうしたらいいのでしようか」 と訊ねることがしばしばあります。この時にカウンセラーが自分の考えを述べてしまうと、相談者は心の奥に秘めた自分の答えと照合します。答えが同じであればよいのですが、違っている場合には、相談者がカウンセラーの考え方を批評するような展開になりかねません。

相談者が心の奥に秘めた自分の答えを簡単に改めることは期待できず、かといってカウンセラー側も先の答えを否定することができない状態になり、双方が修正のきかない不毛の議論に終止することになってしまいます。

「どうしたらよいのでしょうか」 という相談者の質問には、「どうすればいいと思いますか?」と質問で返すのが正解です。「どうすればいいか二人で考えましよう」というのが、カウンセリングの目的なのです。

復唱の効果


カウンセリング中に、対話の要点を整理しながら論理的に話ができる人はほとんどいないといっても過言ではありません。話の内容が横道にそれたり、飛躍したり、話そうとすることを忘れてしまうことさえあります。

そのような時はカウンセラーが「話の要点」を復唱することで、相談者は論点を再認識し、本題から逸れずに話を先に進めることができます。

カウンセラーによる「会話の要点」の復唱は「オウム返し技法」と呼ばれることがありますが、それは相談者の発言をそのまま返してしまうことではありません。「話が正確に伝わっている」と相談者が感じるように、適度な言い換え語を用いるのです。

感情が現れている言葉は置き換えない


相談者が「動物病院の態度は許せない」と発言した場合、「動物病院」の部分を「獣医師」と置き換えるのはよいとしても、相談者の感情が現れている「許せない」の部分は他の言葉で言い換えない方がよいでしょう。

「やはりあなたは獣医師に不満を感じているのですね」というように置き換えてしまうと、相談者は「許せない」レベルの怒りが「不満」レベルまで矮小化されたことに不信感を抱くことになります。

相談者の発言の要旨をまとめ、整理し復唱することで、対話は先に進みやすくなりますが、結果的に相談者の行動や考え方を評価、批判するような言い方は避けなければなりません。


一般社団法人国際家庭犬トレーニング協会
わんわん相談員の詳細はこちら

SNSでもご購読できます。