グリーフワークとはグリーフ(悲嘆)とワーク(仕事)を組み合わせた言葉で、直訳すると「悲嘆の仕事」ということになりますが、この場合は「悲嘆からの回復プロセス」という意味に用いられます。
人の防衛本能として起こる
グリーフワークとは、その人にとって大切な人やペットなど、心の支えとなっていたものを失った時に、悲嘆状態にある意識の中で自然に始まり、悲嘆から回復に向かおうとする心の過程(回復プロセス)を現わしています。
人体には、突発的な外的ショックを受けた場合、その影響を最小限にくい止める方向に働く肉体的、精神的な防御機能が備わっています。
それは突然の大きなショック状態から自身を守るために人間に備わった防御本能の一つであり、ペットロスの症状は精神医学的に見た場合、ペットの死というショック状態からの人体の逃避行動であると考えると分かりやすいでしょう。
誰にでも起こる正常な反応
グリーフワークは 「誰にでも起こる正常な情緒的反応」であり、人それぞれの無意識の中で始まり、心の修復を実行して完了します。
グリーフワークの回復プロセスには一応の手順がありますが、これは必ずしも誰に対しても順番に起こり、また順番に修復が進むというものではありません。複数の段階が重なって現れることもあり、不要なプロセスを飛ばしたり、同じ段階を繰り返すこともあります。修復が完了するまでに要する時間には個人差が大きく、数ヶ月から数年と、かなりの幅があります。
回復プロセスに共通すること
悲嘆からの回復プロセスに共通するのは、「愛するものの死を受け入れることができるのは、かなりの時間が経過してから」ということです。多くの人は、「本当はまだ生きているのではないか」という淡い希望を持ちながら、現実を受け入れることができずに、長く苦しい時に耐えています。悲嘆に直面した人のすべてが「悲嘆からの回復プロセス」の各段階を通過するわけではなく、必ずしも各段階を順序通りに進むものでありません。
回復プロセスは個人の中で進行するものですが、各プロセスの通過を容易にするために、隣人、関係者が適切な援助の手を差し伸べることがとても大切なことであると言えるでしょう。
病的悲嘆
喪失を体験した一定割合の人が、 悲嘆のプロセスの各段階を自力で克服できない場合があります。
悲嘆のプロセスの中間期がいつまでも続いたり、慢性化することによって生理的な機能、社会的な意欲が低下して、人生を前向きに進めなくなる傾向が見られます。身体的には呼吸障害、頭痛、消化不良、嘔吐、睡眠障害、食欲不振などの症状が現れます。個人差を考慮しても、半年間で悲嘆の段階が全く進行していないようであれば病的と判断すべきです。
これとは逆に悲嘆の反応が全く現れず、何事も無かったかのように振る舞う人や、むしろ喪失を喜んでいるように見受けられる人がいますが、これは単に悲嘆の感情を自ら抑圧しているだけなので、いつかその抑圧された悲嘆が増幅して現れることになります。
病的な徴候が現れた時に身近な人が不用意に励ましやアドバイスを行うとかえって悪化することがあります。薬物やアルコールなども一時的に気を紛らわせたり、症状が重い時に睡眠がとれるように用いるのは適切ですが、通常、アルコールを摂取すると自責の念が強くなると言われています。
また、アルコールを過度に摂取している姿は家族や身近な人から見て非難や拒絶の対象となりやすく、周りの人間関係も悪化してしまうことも多く見られます。最終的にはアルコール依存症に陥る可能性もあるので、充分気をつけなければなりません。
安定剤なども、それによって情緒を安定させてしまうので、たどるべき悲観のプロセスの進行を遅らせてしまう可能性があります。
病的悲嘆は、進行すると自己の自立が阻害され、うつ病やその他の精神的疾串に至る恐れがあります。
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