AAAの実施にあたっては、セラピー動物に与える体力的な疲労やストレスの蓄積についても充分に注意を払う必要があります。
言葉を発することのできない動物に対する気配りは重要で、ボランティアは終始担当する動物に付き添い、動物がリラックスできているかどうかを観察します。動物がストレスを感じている状態ではセラピーの効果は望めません。
人に触れられても平気という性格の動物でさえ、触られる場所やタイミングによってはストレスになる場合があります。動物がリラックスしている状態はAAAの必須条件です。仮に居眠りをしている動物であっても、癒し効果は発揮できるのです。
ボランティアは動物の表情や動作に精神的な動揺が見られないか観察することを怠ってはなりません。また、セラピー動物の選定にあたっては、AAAを実施する施設までの移動方法や所要時間が動物に与える負担にも考慮しなければなりません。
AAA活動の将来
AAAはAAT(動物介在療法:患者の心身の障害を治療する目的で動物を利用する活動)とは異なり、個別の参加者に対する医学的な効果を評価することが前提にはなってはいません。
しかしAAAが広く社会に認知され、医療の一分野で有益であることが認知されるためには、AAAの効果を科学的に解きあかす研究が行われなければならないと考えます。
現状ではAAAによって 「ある病気が全快した」 と言うような表現は不適当ですが、活動事例を蓄積することによって 「ある病気の治療の一助となる」 と認められることは難しくないと思われます。
特に「気持ち」が症状に影響する精神疾患の症状の改善にはAAAの果たす役割りは大きいと言えるでしょう。動物が人に与え得る健康の促進効果を、科学的に評価するための研究が続けられることが重要です。
AAT、AAA活動の課題
「動物を医療施設に持ち込むのは無謀」という考え方が、依然として病院や医療関係者には健在です。
医療施設に動物を持ち込む場合には、もちろんあらゆる不測の事態を想定した対策を講じなければなりません、動物の持ち込みを 「無謀」 でなくす方策がないわけではありません。
想定されるリスクの大きさ、言い換えればリスクを無くすために必要な労力や費用の大きさと、今日現在のAAT、AAAの効果の比較の問題なのです。
加えて、日本の医療現場のひっ迫した状況もAAT、AAA推進の阻害理由になっていると考えられます。動物が人を癒す研究よりも、新薬を開発する研究が優先される状況はこの先も長く続くと思われます。
近年、日本でもAAT、AAAを推進しようとする機運は高まりつつありますが、これらの活動は、主に獣医師やボランティアによって支えられているのが現状であり、AAT、AAAプログラムを構築するための基礎的研究も不充分な状態です。
一般社団法人国際家庭犬トレーニング協会
わんわん相談員の詳細はこちら