ノン・バーバルコミュニケーション

ノン・バーバルコミュニケーションとは、言語 (バーバル) 以外のコミュニケーションを意味します。

人と人の意思の伝達は主として言語によって行なわれていますが、この場合、話し手のメッセージは言語の意味のみで伝わるのではありません。



心理に働きかけるノン・バーバルコミュニケーション


聞き手は、話し手の「声のトーン」によって言語の意味の解釈を上回る情報を受け取っています。言語では嘘を話すことで聞き手を欺くことができますが、話し手の声のトーンは言語よりも高い精度で真意を伝えるのです。

さらに聞き手に対して視覚として届く、「話し手の表情 (身体言語)」は、言語の意味や声のトーンをはるかに上回る情報量をもっています。伝える言語の内容はまったく同じでも、話し手の声のトーンや話し手の表情によって、まったく異なるメッセージとして伝わることは、誰もが経験していることではないでしょうか。

バーバルコミュニケーションよりノン・バーバルコミュニケーションの方がはるかに人の心理に働きかけます。

近年多用される電子メール(文字情報)でのやりとりは、バーバルコミュニケーションに近く、送り手の声のトーンや表情が届かないために、親しい人間関係にあっても誤解を招く可能性があり、送り手の真意が伝わらないケースがあります。

電話での会話は「声のトーン」が付加される点で、電子メールでのやりとりよりも精度は高まりますが、面識のない人同士が会話するツールとしては、充分なものとは言えません。電話を悪用した「振り込め詐欺」のような事件が多発することからも言えるように、電話は聞き手側を欺くことが比較的容易にできるコミュニケーション方法と言えます。

これらのことからも、人と人が直接顔を合わせて対話するコミュニケーションは最善の方法であると言えるのではないでしょうか。

コミュニケーションの三要素


・言語・・・バーバルコミュニケーション
・声のトーン(聴覚)・・・ノン・バーバルコミュニケーション
・身体言語(視覚)・・・ノン・バーバルコミュニケーション

人と人が対面し、交互に話し手となったり聞き手となったりするコミュニケーションの方法では、言語はむしろ補助的な役割りに後退し、最小限の言葉が交されるだけで充分に意思は通じると言っても良いでしょう。

仮に、語、声のトーン、身体言語の三つの要素が互いに矛盾した内容を伝えている場合には、聞き手側は、言語よりも声のトーンを優先し、声のトーンよりも身体言語を優先するのが一般的です。

医療機関などでは、別の作業をしながら、患者の方を見ることもなく「おだいじに」と声をかける関係者が多いものですが、この場合の言語はまったくコミュニケーションに役立っていないと言えます。

遅刻をしてきた社員に上司が「おはよう」と声を掛けたような場合にも、もはや言語的な解釈には意味がありません。

信頼関係が最も大切


カウンセラーは、聞き手となる場合であっても話し手となる場合であっても、ノン・バーバルコミュニケーションの達人を目指さなければなりません。特に聞き手となる場合は、言語の解釈だけでなく、声のトーン、身体言語の要素を組み合わせて相談者の話を注意深く聞き、理解することに徹することが要求されます。話し手となる場合には相談者を不安にさせることがないよう、カウンセラー自身も自らの表情や動きに十分注意しなければなりません。

カウンセラーは相談者との間に信頼関係を築くために最も長い時間を費やすことが必要であると言えます。

相談者の中には、思い悩んでカウンセラーと対面した場合でも、なかなか本心を話し出せないことがあります。またカウンセラーとの間に信頼関係が育っていない場合には、故意に本心とは逆のことを言葉にすることもあります。

カウンセラーは相談者の言語や表情に隠された「真意」をしっかり読みとることが大切で、相談者が進んで話を始めることのできる雰囲気を作りあげることが肝要です。

自分勝手な解釈を加えない


カウンセラーは相談者の言葉や感情に反応して自分勝手な解釈を加えてはなりません。カウンセラー自身の思い込みで相談者の人となりを決めつけてしまうと、相談者の真意を読み解くことができなくなってしまいます。

相談者が求めているものは常識的な一般論でもなく、カウンセラーの個人的な感想でもありません。そのような話ばかりをしていると、たとえ話術が巧みであったとしてもカウンセラーの責務は果たせません。

相談者とカウンセラーの間に、信頼関係に基づいた共有空間が創られなければ、相談者の心はいつまでも閉ざされたままでしょう。相談者とカウンセラーの双方が相手を受容し、お互いを信頼できる空間に身を委ねた時から、相談者は心を開いて語り始めるのです。


一般社団法人国際家庭犬トレーニング協会
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