ペットロスカウンセリングにおいてカウンセラーが相談者の話をしっかり聞くためには、相談者がリラックスして話せる環境を作ることがとても大事です。
一般のケースではカウンセラー側が応接スペース(カウンセリングルーム)を用意して相談者を迎えることになりますが、カウンセリングルームで使用する椅子やテープルのサイズや配置については、「パーソナルスペース理論」に基づいた細心の配慮が必要になります。
パーソナルスペース
人は無意識の内に、相手と自分との間に最も受け入れやすい距離を保とうとするものです。これを「パーソナルスペース」と呼びます。パーソナルスペースは個人の持つ 「心理的」 な縄張りであり、他人に突然侵入されると不快になります。
一般的には、パーソナルスペースは自分を中心にして前に最も長く、次いで後、左右の順で狭くなる卵型をしていますが、パーソナルスペースの大きさは個人差が大きく、 当事者の人的特性によっても、対話する相手の性別や年齢、性格的特性、外見的特徴などによっても微妙に変化します。
4つの距離帯
文化人類学者エドワード・ホールは、パーソナルスペースを4つの距離帯に分類しています。
1、密接距離4 5cm以下
恋人や親子のような関係に見られる距離。
体に接触することが可能であり、ノン・バーバルコミュニケーションが重要となる。
2、個体距離4 5~1 2 0 cm
親しい友人関係に見られる距離。
バーバルコミュニケーションが主な手段となるが、体への接触も可能な距離である。
3、社会距離1 2 0~3 6 0 cm
仕事上の付き合い、顔見知りの関係に見られる距離。体への接触が不可能であり、会話にはある程度の音量が必要となる。
4、公衆距離3 6 0 cm以上
知らない人との関係に見られる距離。
個人的な関係や会話は成立しない。
親しい友人同士であれば60cmの距離で話をしていても気になりませんが、仕事上の来客が60cmの距離に近寄ってくれば不快に感じるものです。
エレベーターや混雑した乗り物などでは、やむを得ずお互いがパーソナルスペースを意識的に狭くすることでコントロールしています。満員の乗り物から降りた時の開放感は、身体的な圧迫から逃れたことよりも、パーソナルスペースの制御から解かれる心理的な感覚であると言えるでしょう。
パーソナルスペースの調整
カウンセリングルームにおける相談者とカウンセラーの位置関係については、相談者のパーソナルスペースを考慮して準備することがとても大切です。対面する距離がカウンセラーにとっては適当だと感じる距離でも、相談者の感じ方は異なることが多いからです。
一般論として、プライベートな相談を前提とした来訪者のパーソナルスペースは、迎える側のパーソナルスペースよりも大きいと言えます。カウンセラーとの距離が近過ぎると、相談者はパーソナルスペースを侵された不快感から緊張が解けず、場合によってはカウンセラーに嫌悪感を抱く恐れもあり得ます。逆に距離を取りすぎた場合も、相談者はカウンセラーに対し親近感をもつことがなく、容易に心を開くことができません。
カウンセリングルームではテーブルを挟んで、相談者用もカウンセラー用も移動が可能な椅子を用意し、双方で前後左右に調節できる工夫が望ましいでしょう。少なくとも、初対面で席につく時には、相談者が自由に距離を取れるような配慮が必要です。
また、そうすることでカウンセラーは対話中に相談者のパーソナルスペースの変化を観察することができ、相談者の心情の変化を読みとることが可能になるのです。
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