犬や猫の寿命は明らかに人間の寿命より短く、必然的に飼い主はペットの死に立ちあうことになります。人類は長い歴史の中で多様な動物と生活を共にし、これらの動物との死別を経験してきました。「命あるもの」との死別は避けられないものなのです。
ペットの飼育に関する内閣府の世論調査(平成2 2年)でも「ペットの飼育をしない」と解答をした人の多くが、飼育をしない理由の中で「死ぬと別れが辛い」と理由を挙げています。また、「死ぬと別れが辛い」と回答した人の多くは50歳台です。
ペットの飼育をしない理由
充分に世話ができない・・・46.2%
死ぬと別れがつらい・・・37.0%
集合住宅で飼育が禁止されている・・・25.2%
近所に迷惑がかかる・・・18.5%
家や庭が汚れる・・・13.6%
費用がかかる・・・10.4%
動物が嫌い・・・10.2%
家や庭が狭い・・・6.8%
ペットからうつる病気が心配・・・6.8%
「飼育をしなければ、悲しむこともない」という考え方もあり、確かに正論ではありますが、かと言ってペット飼育の是非を問うものではないと考えます。
仮に今、ペットの死に直面し、悲しい気持を味わっている飼い主がいたとして、この飼い主は「命あるもの」を飼育した自分の行為を後悔しているでしょうか。
ペットを飼育してきたことによって得られた喜びと、死別による悲しみを量的に比較することには無理がありますが、一般論としてペットを飼育することによって得られたかけがえのない思い出は、やがて来る死別の悲しみを乗り越える力を費やしても余りはあると考えられます。
ペットの死に直面し、ペットロスの兆候が見られる飼い主でさえも、飼育を始めたことを後悔することはないでしょう。ペットとの死別を悲しむ心は、優しい心をもつ裏付けであって、これこそがペットの飼育を肯定する人々が最も重視する飼育の効用なのではないでしょうか。
ペットの病死
動物医療が進歩したことによりペッ トは今、長寿傾向にあります。
人間と同様にペッ トにも多くの病気がありますが、いわゆる致命的と言われた感染症に対しては定期的なワクチン接種が功を奏し、脅威ではなくなっています。フィラリア症の予防が容易になったこともあって、ペットの突発的な病死に直面することも少なくなったと言えます。
近年病死するペットの死因の主たる病名は「癌」であり、この病気の性質上、一定期間病状を観察しながら介護を続けた後に死亡するケースが多くなっています。
このように、飼い主がある程度、心の準備をする余裕がある場合には、死に直面した時の悲嘆の現れ方が比較的穏やかです。
ペットの病死が発端となるペットロスの例では、飼い主は治療を始めた時期や方法、動物病院との関係などについて思い起こして悩む例が多いものです。それは、献身的で真剣に介護に取り組んでいた飼い主ほど陥りやすいと言えます。
「病気に気付くのが遅かったのではないか」「動物病院の選び方は正しかったのか」「手術はすべきだったのか」「自分の判断と対応次第でペットの死を回避できたのではないか」 など、少なくとも死別の時期を遅らせることができたのではないかと自責することが多いのです。
また、「治療を担当した獣医師の診療ミスではないのか」「他に治療方法があったのではないか」 など、他を攻撃することで自らの苦痛を紛らわそうとする飼い主も見られます。訴訟社会と言われる米国では、ペットの「医療ミス」が訴訟に至る例も少なくありません。
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