「命あるもの」の最期には「死」が訪れます。それはペットも人も同じです。
このことを頭では理解できていても、いざ自分のペットが死を迎えるとなると、平静を保つことはなかなか容易なことではありません。「慈しんでいた動物が死を迎えた」というように客観的に納得することはできないのがむしろ普通でしょう。
ペットとの死別によって飼い主が受ける衝撃は並々ならぬものがあり、情緒的な障害にとどまらず、身体的障害に至る場合もあります。ペットとの死別によって飼い主が失うのは、個としての動物ではなく、ペットとの暮らしの中で双方が築いてきたもの、与えたもの、得たものの全てであると言えましょう。
ペットが飼い主の心の寄りどころであり、ペットから精神的な安定を得ていた場合には、飼い主はペットの喪失により精神の安定を欠く事態となり、重篤な病的悲嘆に陥るのです。またペットが飼い主の日常生活上の伴侶役であった場合には、かけがえのない友を失うことになり、深い喪失感を味わうことになります。
ペットとの死別に由来する悲嘆や喪失の悲しみは、不可避、不可逆のものであり、何をもってしても代替できないものと言えるでしょう。日常生活を共にしたペットを失うことによって悲しむのは、人として当然の心理状況であり、辛い気持ちに陥るのは決して異常なことではありません。
ペットの死と受け止め方
ペットを亡くした時の悲しみ方や辛さの度合いは、飼い主それぞれによって異なるのが普通です。数日で立ちなおる飼い主もいれば、数年間続く人もいるかもかもしれません。また、ほとんど生活態度に変化を見せない人もいれば、無気力に過ごす人、極端な例では自殺を考える人さえいるようです。
しかし、ペットを失った悲しみを素直に受け入れることができ、素直に悲しむことができる環境に自分が置かれていれば、重症にはならないと心理学者は言います。
ペットの死の受け止め方に個人差が現れるのは、飼い主の年齢、性別、人生経験、生活環境などの人的特性に加え、飼い主とペットがどのように関わって生活してきたかという、さまざまな要因が複雑に絡むことによるところが大きいと言えます。
一般論として、ペットとの生活時間が長い飼い主ほどペットロスの兆候は重く、ペットに深く依存していた飼い主ほどペットロスの症状が重篤になるようです。飼い主のペットへの依存の程度が一定限度を超えるケースでは、飼い主に何らかの心的障害が認められることもあります。
身体的、心理的な「満たされぬもの」を一方的にペットに注ぐことで癒されていたり、飼い主の心の問題をペットとの関わりによって中和してきたような場合、ペットを亡くした時に精神的に大きくバランスを崩す結果となるのです。飼い主がもともと依存的な性向を有する場合、アルコールや薬物依存症に発展すること例も報告されています。
うつ病は、配偶者や親などとの死別といった「喪失体験」が契機となって発症する例の多いことが従来から指摘されてきましたが、近年ではペットの喪失も、うつ病発症の契機になることがあるようです。
ペットロス発現の傾向
以下は「飼い主の特性」と「発現の傾向」です。
◆飼い主の性別 ・・・ 女性に高率に現れる
◆飼い主の年令 ・・・ 中高年者に高率に現れる
◆ペットの飼育期間 ・・・ 飼育期間が長いほど高率に現れる
◆ペットとの接触時間 ・・・ 接触時間が長いほど高率に現れる
◆ペット看護の期間 ・・・ 看護の期間が短いほど高 率に現れる
◆同居家旅の数 ・・・ 同居家族の数が少ないほど高率に現れる
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