ペットの行方不明

ペットロスの原因となるペットの喪失は、ペットとの死別によるものがほとんどですが、時にはペットの逸走や盗難などに起因する場合もあります。

ペットを室内で飼育することが普通となって近年では、ペットが飼育家庭のごく近所でも迷い子状態になることが知られています。散歩途中に飼育者と離れてしまったまま戻らないケースも少なくありません。



行方不明が原因のペット喪失の場合、飼育者はペットとの死別の場合と同様、もしくはそれ以上の悲しみを味わいます。

ペットが行方不明になった場合には、飼育者にとって最善の結果と最悪の結果が想定されます。再会できる希望と、ペットを発見できない絶望の気持が交錯し、飼育者の気持は動揺を続けます。自分のペットが生きているのか、死んでいるのかさえ分からない飼育者の心理状態は悲痛なものです。

親切な人に拾われて幸せに暮らしていると考えようとしても、空腹に耐えて徘徊しているペットの姿が浮かんでしまったり、元気に戻ってくるかも知れないと希望を持とうとしても、二度と戻ってこないに違いないと落ち込んでしまうなど、忘れられない、諦められない状況が際限なく続き、死別した場合よりもむしろ飼育者の心情の起伏が激しく、回復が困難な状態に陥ることもあります。

ペットの行方不明が原因となるペットロスでは、時間が経過することによる癒しの効果が期待できません。

高齢者が飼育するペットの数が増加する昨今、飼育者自身の健康状態の変化によってペット飼育の継続が困難になってしまうケースがあります。ペットの飼育ができない場所への転居など、飼育者の生活環境の変化が理由で、ペットを手放す決断をせざるを得えない場合もあります。

これらの例のように、飼育者自身の事情がペットとの別れの理由に関与する時、多くの飼育者は自責の念にさいなまれ、罪悪感を募らせることになります。自ら「ペットを捨てた」「ペットを不幸にした」と思いつめる飼育者は、年月が経過してもほとんど癒されることのない罪の意識をもち続けるのです。

ペットロス症状の軽減


近年ペットロスが社会問題として取り上げられるようになったのは、飼育者が「ペットの死を契機として「自分は異常なのではないか」 「いつまでも忘れられないのはおかしいのではないか」「まわりの人が変な目で見る」など自分自身に不安を感じたり罪悪感を募らせたりして、カウンセリングや治療を必要とするレベルにまで至ることがあるからです。

精神的なストレスは、やがて疲労、拒食、不眠など身体的な変調へとエスカレートしていく危険をはらんでいます。

ペットロスを回避したり症状を軽減するためには、飼育者は自分のペットとの別れを「儀式」として体感する事が重要です。ペットとの死別を不可避なものと考え、亡くしたペットとの絆に区切りを設けるため、積極的に気持ちの切り替えを行なうべきなのです。

ペットの最期のシーンに立ち会う、遺体に触れる、遺体をきれいにする、自ら埋葬する、 葬式 (セレモニー) を行うなど、自分のペットがこの世から居なくなったことを現実の出来事として受け止め、時間軸に添って感情を整理する行為が、悲しみからの離脱に役立つものと思われます。昨今、日本でもペット葬儀や供養などのサービスが増加する傾向にあります。


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