ペットロスとは

ペットロス(pet loss)とは、直訳すると「ペットを失う」ことです。

家族の一員として大切に育ててきたペットである犬や猫などと死別(喪失)することが発端となって、飼い主が精神的、身体的な不調状態に陥ることをペットロス症侯群と呼んでいます。

1970年代の後半に、ペットを失くした飼育者が陥った精神的、身体的障害の症例報告がイギリスの精神医学の雑誌に載せられたのが最初であり、その後、精神医学関係者によって「ペットロス症候群」という言葉が使われるようになりました。

1980年代以降、欧米では本格的に「ペットロス」の研究が進められています。近年ではペットロスのサポートのために、専門知識をもったカウンセラーが対応するシステムも確立し、心理療法の分野では、ペットロスからの回復を援助するためのプログラム(グリーフセラピー)も存在します。

家族と同然の生活を共にしてきた動物を失うすることは、誰しも相応のショックが伴うものと考えられますが、その症状が、日常生活に支障をきたす域に達する場台をペットロスと呼び、ペットロスカウンセラーの手助けや、心療内科や精神科での治療を必要とするケースもあります。

ペットロスの症状を精神医学的な観点から見た場合、ペットの死という現実を受け入れられない人体の逃避行動であると言えます。また行動医学的な観点からは、ペットの死という「刺激」に対する人体の「反応」と見ることができます。


◆ペットロス症候群には、次のような症状が例として挙げられます。

・不眠、情緒不安定、うつ病、疲労、虚脱、無気力、めまい
・摂食障害(拒食、過食)
・精神症状(錯覚、幻覚、妄想)
・身体症状(心身症、胃漬瘍)


日本社会とペットロス


日本でも、近年「ペットロス」という言葉を使って、ペットと死別した飼い主の特定の症状を現わすことが多くなりました。

日本では経済成長期以降、ペットの飼育形態が大きく変化(欧米化)しており、これによってペットとの関わり方が親密となり、死別した場合の喪夫感を大きくしていることは否めません。

核家族化、少子化、老齢社会など、現代社会が抱えるいずれの現象を考察しても、この先ペットの飼育率はさらに高まり、ペットと飼育者との情緒的交流(絆)はますます深くなっていくと考えられます。核家族、少子家庭では、身近な人の死を経験する機会が少なく、家族同然の存在であるペットとの死別が、ことさら衝撃的な出来事となり得るのです。

ペット共生文化が高度に成熟した日本にとって「ペットロス」は、避けることのできない社会現象と言えるでしょう。ペットロスを 「一部の動物好きに起こる特異な現象」ととらえることは正しくありません。

飼い主はペットの死に直面して、例外なくペットロスの一症状としての悲嘆を体験しますが、この状態は決して病気ではありません。むしろ軽度な症状については、健全な精神性の発露とみなすことができます。

飼い主が本質的に建設志向の心身の持ち主である場合には、これらの悲しみからは時間の経過によって癒され、自力で悲嘆の状態から回復し、喪失感を克服することになります。しかし、おおむね1ヵ月以上、飼い主の悲しみが癒えず、健康を害するほどに悲嘆に陥っている状態は健全とは言えません。

現代社会は着実に 「ペットロス」 発現の頻度を加速する方向に向かっているという事実を直視し、積極的に対策を講じていかなければならないと考えます。


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