ペットの寿命は人よりも短いことは承知していても、飼い主にとってペットとの死別は衝撃的な出来事であることに変わりはありません。
飼い主を取り巻く隣人や知人が、ペット飼育の経験がない場合も大いにありますし、ペットと人との関わり方についての考え方にも個人によって差があります。ペットと死別して悲しんでいる飼い主に対し、隣人や知人のすべてが共感してくれるわけではないという状況が、一般的にはあります。
飼い主にとっては家族の一員であり、かけがえのないパートナーの存在であったペットであっても、隣人が、家族が亡くなった場合と同様の気配りをしてくれることはあまりないと言えるでしょう。
ペットと死別して悲嘆状態にある飼い主に対して、隣人が多少の偏見の眼差しを向ける場合もあります。ペットの飼育経験がない隣人にとっては、ペットとの死別によって病的に悲嘆する飼い主を理解することはできず、特異な人に見えると考えられます。
ペット喪失に直面した飼い主の悲嘆の度合いには個人差が大きいと言えますが、飼い主の心情と、飼い主を取り巻く隣人のペット飼育に対する認識の違いが、飼い主にとって大きなストレスになることは多いものです。
ペット喪失の悲嘆症状は、時の経過と共に軽くなっていくのが普通ですが、飼い主を取り巻く社会や、隣人の理解を得られないケースでは、飼い主が厭世感を深めるようになり、身体変調をともなう心的障害に陥ることもあり、悲嘆症状からの回復を遅らせることに繋がります。
ペットを死なせた飼い主の心理の流れは、ペットを飼育しない人でも幾分かの理解はできるものです。隣人が飼い主と同じ目線に立って、よき相談相手になることで、症状の悪化が回避できることも多いのです。
自責の念が症状を重くする
ペットを喪失した飼い主は、自分の心情と周囲の人々の言動や対応との差の大きさに、疎外感や孤立感を深めていき、ペットロスの症状を自ら重くしてしまうことが多いものです。
ペット喪失の前後の自分の行動がペットの死を招いたのではないかと、自責の念を抱く飼い主も多くいます。死因となった病気の治療の方針を変えたことや、自分が介護に負担を感じていたことなどに、罪の意識を抱くのです。
自分の落ち度を探し出し、それが原因でペットが死んだという考えに陥ってしまいがちな飼い主の多くは、献身的に介護に取り組んできた人なのです。
ペット喪失直後の悲嘆は大きくても、ほとんどの飼い主は時間の経過によって徐々に回復していくケースが多いものですが、時の経過によっても悲嘆症状が改善に向かわない場合や、病的な兆候を示すケースでは、専門家の治療を必要とします。
ペットロス回避のために
ペットとの死別に際し、飼い主が重度のペットロスに陥ることがないようにするためには、日常的に極端にペットに依存するような飼育習慣を避け、ペットとの間に適度な距離を保って暮らすことが望ましいと言えます。
ペットの死に直面した時には冷静にペットの死を受け入れ、悲しみを出し尽くすことが肝要です。また、ペットの飼育を開始するにあたって、「ペットは自分より先に死ぬ」「ペットとの死別は避けられない」と言う認識を強くもつことも重要です。
ペットを飼育すると言う行為は、ペットの死に立ち会うこと、ペットを喪失する悲しみから立ち直る試練までも含んだものであると認識すべきであると言えるでしょう。
ペットロス多発の背景には、ペットがペットの域を超え、共に暮らす家族の地位さえ育者にとって精神的なよりどころとなっている実情があります。これは、家族関係に求めても得られなくなった絆や癒しをペットに一方的に求める飼い主が多くなっていることが問題とも考えられています。
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