ペットの飼育者が死別などの理由でペットを喪失し、日常生活に支障をきたすほどに心身にダメージを負うことをペットロスと呼び、ペットロスの状況にある人を立ち直らせるためにカウンセリングを行う人をペットロスカウンセラーと呼んでいます。
ペットロスの兆候は、飼育者が自力で回復できる軽微なレベルで推移するケースと、ペットロスカウンセラーの手助けを必要とするケース、専門医による治療が必要なケースがあります。
日本のペット飼育文化の現状を考える時、将来的にペットロスカウンセラーの必要性、有用性は極めて高いと言えるでしょう。しかしながら日本ではペットロスが社会問題として注目されたのは近年のことですので、ペットロスカウンセラーの呼称や役務の内容は、認知され定着している状況にはありません。
ペットロスカウンセラーの役割りは、「ペットロスからの回復支援」であると狭義に捉えられがちなのですが、ペットロスを予防するための「ペットロス回避策の啓蒙」や、ペットロスを軽い症状にとどめるための「終末期ペットの看取り支援」などを役務に加えることが望まれています。
カウンセリングの目的
ペットの喪失に直面した飼育者は、深い悲嘆の症状を現わし、一様に心を閉ざすものです。
飼育者が心身共に健康で、自らペット喪失の事実に立ち向かい、建設志向の考え方をもつ場合には、「時間の経過」が有為に働き、自力で回復に向かうと考えられるので、ペットロスの症状に陥る心配はないでしょう。
そのため、ペットを喪失した飼育者がカウンセラーの前に相談者として現れる時は、自力ではペット喪失の悲嘆から立ち直ることが困難であると、飼育者自身が判断した時と一般的には考えられます。
相談者はカウンセリングを受けることによって、自分のカではどうすることもできない問題が、カウンセラーによって解決されると考えがちで、実際にカウンセリングを受ける人の多くが、「カウンセラーによる解決」を期待していますが、当然のことながら、カウンセラーは相談者のもつ悩み事を全て解決する力を持っているわけではありません。
カウンセリングの目的は、相談者自らが困惑の事態から立ち直るために必要な力を発揮できるよう、必要ならばアドバイスを行うもので、積極的に指導をしたり、強力に促したりする目的で行われるものではありません。
閉ざされた相談者の心は、他人の手では開くことができず、相談者自身にその力が蘇るのを待つしかないのです。
ペットロスの兆候が重篤で病的な場合は、心療内科医による治療を必要とするケースも考えられ、カウンセリングと医療行為との明確な区分も必要です。
カウンセラーの仕事の領域
ペットロスカウンセラーの仕事の領域は、自力で回復できるレベルを超え、治療を必要とするレベルに達していない症例の範囲であると考えます。
ペットロスの兆候が特に重篤でないケースに限って言えば、ペットロスカウンセラーが相談者の人格を容認することに始まり、相談者のペットロスの兆候に対する理解を深め、公正な観察と評価を行い、さらに相談者からの信頼を獲得することができれば、相談者のペットロスの兆候は回復に向かうと考えられます。
病気か病気以前かの判断は早い段階で行うべきで、ペットロスの兆候の程度によっては相談者に心療内科での診察を勧めることも、ペットロスカウンセラーの重要な仕事です。
カウンセラーは相談者が最も早く回復に向かうことのできる方法を模索するべきであって、治療による回復が望まれるケースでありながらカウンセリングによる対応に終止することは慎まなければならないと考えます。
相談者の態度に一貫性が見られず、カウンセラーが相談者の人格を認め得ない状態や、逆にカウンセラーが相談者からの信頼を獲得できない事態が続き、打開の目処が立たないような事例では、カウンセリングによる回復の可能性に疑問を持つべきであるとも言えるでしょう。
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