ペットロスカウンセリングにおける受容と同意

相談者の気持ちを受容することはカウンセリング技法の基本をなすものです。ここで言う受容とは、カウンセラーが相談者の気持ちを否定したり批判することなく、相談者のあるがままを受け止めることを意味します。



「受容」は「同意」とは異なります。カウンセラーは相談者の気持ちをそのまま受け止める(受容)ことが重要ですが、相談者と同じ意見(同意)である必要はありません。

カウンセラーは自己の倫理観や常識によって、相談者の気持ちを、善い、悪い、望ましい、望ましくないなどと評価を加えて受け止めてはなりません。またカウンセラーは相談者がなぜそのように考えたのか、ということを詮索してはなりません。用意した知識やありきたりな倫理感によって相談者の気持ちに同意したり、否定することがあってはならないのです。

カウンセラーは相談者の気持ちに自己の解釈を加えてはなりません。またカウンセラーは相談者の感情に巻き込まれることなく話を傾聴し、相手を受容しようとする誠実さをもって相談者と向き合わなければなりません。相談者の気持ちを、語られるがままに純粋に受け止めるのです。

「クライアント中心療法」と呼ばれるカウンセリング技法では、カウンセラー側には一切の知識や権威は不要とされ、その代わりに無条件の肯定と共感的理解の態度が求められます。

相談者を正当化する


カウンセラーが最初に行なうことは、相談者の話をしっかり聴き、受容することです。ペットロスから抜け出す近道は、相談者が心を開き、悲しみを十分に吐き出すことだからです。

カウンセラーは、相談者がカウンセラーの前で 「喪失の悲しみ」 を表現することが恥すかしいことだと思わせないように配慮することが肝要です。悲しみの渦中にいる相談者は、この段階でカウンセラーの意見や助言、体験談などを聞く余裕がありません。

カウンセラー自身にペットを亡くした経験があると 「その気持ち、わかります」 と話してしまうことがあります。確かに同じ体験をしていると親近感がわき、共感を得やすいのですが、カウンセラーの価値観に基づく思い出話が、そのまま相談者を励ますことにはなりませんし、カウンセラーが自分の体験談を語れば語るほど、相談者は心を閉ざす結果ともなりかねません。

また、たとえ相談者が何かを間違っていると思えても、カウンセラーが、相談者が信じていることを否定したり、自分なりの解釈を加えるのも望ましくありません。カウンセラーは相談者が話を続けやすい空気を維持し、しっかりと聴く姿勢を貫き、相談者を無条件に受容することが必要です。

罪悪感より楽しかった思い出を


ペットロスに陥った相談者は、様々なことに後悔し、不当に罪悪感を抱いている場合が多いものです。これらの罪悪感は、ペット喪失の現実ではなく、相談者自身の無力さや自分が犯した失敗に向けられていることが多く、「悪いのは自分なのだから自分が苦しむのは当然」という考えに収斂して、どんどん精神力を消耗させます。精神力の消耗は悲嘆を長引かせる大きな原因となりますので、早期に取り除く必要があります。

ペットのためを思って行なった相談者の行為が、仮にペット死亡の原因になったとしても、相談者には罪がないことを納得させなければなりません。

ペットロスに陥っている相談者は、ペットの死にざまについて記憶し、執着していることが多いものです。またペットの最期の姿を忘れず、長く悲しみ続けることこそが愛の証だと考えていることもあります。しかし記憶にとどめるべきは「ペットがどのように死んだか」ではなく、「自分がペットとどのように過ごしたか」です。

ペットの死についてばかり話す相談者には、ペットとの楽しかった思い出について語ってもらうように導くと良いでしょう。生前ペットが自分と過ごしたことが幸せだったと思えることは、相談者にとって何よりも救いになります。

相談者が自発的にペットの生前の楽しかった思い出話をするようになれば、ペットロスの症状は回復に向かっていると言えます。最終的には 「自分もペットも幸せだった」 と相談者が心から認めることが重要なのです。

会話のペース


カウンセラーは会話のペースを相談者に合わせるように心掛けます。人は自分と同じ雰囲気の相手、自分と同じ波長を持つ相手に対して仲間意識を持ちやすいものです。仲間意識は親近感を生み、人に話したくないと思うことも「この人になら」と話せる気持ちに変わっていきます。

ゆっくりとした口調の相談者にはカウンセラーも意識してゆっくりと話し、早い口調の相談者にはカウンセラーもテキパキとした口調で応えるようにします。丁寧な相談者ならカウンセラーも丁寧に、くだけた口調の相談者ならカウンセラーもラフな感じで話すことで、双力の距離は縮まりやすくなります。


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