一般的に、心因性の精神疾患は比較的軽い前期症状 (予兆) から始まり、 病期を経て回復期に向かうとされていますが、それに対しペットロスの症状は、ペットの喪失によって突然に、しかも最も重篤な症状から始まるのが特徴です。
生前のペットとの関わり方によって個人差は見られますが、ペットロス症状に陥った飼育者は、おおむね以下の各ステップを経て回復に向かいます。
回復のステップ( 1 )
①ペット喪失の事実を認められない精神状態が続く
ペットの喪失は飼育者にとって突発的な出来事であるので、飼育者は前兆もなく突然ショック状態に陥ります。ペット喪失の直後には、深い悲しみを現わす症状が顕著に現れ、ペット喪失の事実を認められない精神状態が続きます。そしてペットの喪失そのものを否定する方向に向かいます。
②ペット喪失の事実を受け入れられるようになる
程度の差はありますが、泣く、悲嘆などの症状は、ペットを飼育するすべての人が経験する正常は反応であって、この段階で病的と考えるべきではありません。
この時期に飼育者が「うつ病」と同様の症状を呈することがありますが、ペットの喪失(死別反応)が原因のうつ状態は、必ずしも「うつ病」の兆候とは言えません。この時期は、飼育者がペットを失くした事実と正面から向き合い、十分な時を過ごすことが望まれる期間です。
飼育者の生活環境によって個人差はありますが、自力によって回復ステップ( 2 )に向かうのが一般的です。
回復のステップ( 2 )
①自責の念、罪悪感から解放される
ペットが入院中や加療中に死別した場合には、飼育者やその家族にはある程度の心の準備ができており、特に終末の看取りができた場合には、比較的穏やかに推移し、重篤な症状に陥ることは少ないでしょう。
喪失の原因が交通事故や中毒などのように、飼育者自身に落ち度があると思い込むような事例では、悲嘆の度合いが深く、回復ステップ( 2 )の通過に時間を要します。
②冷静に自分の気持ちが話せるようになる
飼育者がもともと持っていた依存的性格によっては、孤独感が高まり、心身のバランスを崩すこともありますが、時間の経過とともに、率直にペット喪失の悲しさを表現できるようになっていきます。
この時期に、飼育者の気持ちを理解してくれる友人や仲間と接することが、自責の念や罪悪感からの回復に役立ちます。
この時期には、ペットの死を含めたペットとの全生活が無駄ではなかったと考えられるようになります。喪失感は徐々に薄れ、回復ステップ( 3 )に向かいます。
回復のステップ( 3 )
①ペットがいない生活環境に慣れる
自分の生活環境の中にペットがいなくなったことを、大きな苦痛を伴わずに認めることができるようになります。ペット喪失の悲しみが、ペットへの感謝の気持に変わって行くのもこの時期です。
②ペットとの生活を記憶の中で整理できる
ペットとの「死別は不可避なもの」と考えることができ、気持の切り替えができるようになります。また、ペットのいない生活を肯定できるようにもなります。そしてペットがいた頃の生活と、ペットのいない現在の生活に一線を引いて区別することができるようになります。
ペットロス症状の緩和
ペットロス症状を重篤にする大きな原因には、「悲しみを押し殺すこと」があげられます。ペット喪失の悲しさを率直に表現することは、悲嘆のプロセスから抜け出すために効果的なのです。
〇悲しみの感情を表現することを恐れない
〇悲しみの感情を表現することを恥じない
〇他人を気にしない
愛するペットを喪失した悲しみを十分に表現することで、苦しみは徐々に薄れ、心身の機能は回復に向かいます。悲しみの発散は苦痛の感情を緩和し、ネガテイプな感情を終わらせることに役立つのです。
また、ペットと過ごした日々の生活習慣やタイムスケジュールを意図的に変えてみるのも効果的です。
散歩、スポーツなどアクテイプなことに熱中できれば、空虚感に襲われることが少なくなり、感情をコントロール出来るようになります。不特定の人と交わるさまざまな活動やボランティアに参加してみるのも良いでしょう。
自分と同じ経験をした人達と集い、それぞれの思い出や悲しみに触れてみることも、ペットロスからの脱出に有効的な方法です。
一般社団法人国際家庭犬トレーニング協会
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