ホメオスタシス(生体恒常性)

ホメオスタシスとは、生体が生まれつき持っている重要な制御機能のひとつで、自分にとってストレスや障害になりうる生体内部の変化に対し、自身のカで体内環境を元の健康体に戻し、生存に適した恒常的状態を維持しようとする機能です。

ホメオスタシスの概念は1 9世紀にクロード・ベルナールによって発表され、2 0 世紀に入ってアメリカの生理学者ウォルター・B・キャノンによって「ホメオスタシス」と命名されました。

ホメオスタシスは、生体の健康状態を定義する重要な要素です。人体の健康を維持するためには血圧、体温、血糖、免疫、酸、電解質、酸素、栄養素などの安定が不可欠です。

生体の恒常性を保つためには、変化の方向とは逆の作用を促す必要がありますが、これらの要素を常時監視し、変化に応じて調節を司るのが自律神経系、内分泌系、免疫系の各器官です。

ホメオスタシスの三角形


人体の生命維持活動は、自律神経系、内分泌系、免疫系の三つの機能の相互作用によって恒常性が維持されています。

ホメオスタシスの三角形として表される三つの機能は、それぞれ独立して機能するばかりでなく、お互いに連携しあって体内環境を整え、健康バランスを保っています。

( 1 )自律神経系


自律神経系は血管の拡張と収縮、内臓の働きの促進と抑制、発汗の促進などで体液の温度(体温)を調節します。また、交感神経と副交感神経の働きによって血液循環、呼吸、その他各種臓器の活動をコントロールします。

( 2 )内分泌系


内分泌系は自律神経系と連携して血液中の成分(血糖、無機塩類、水分など)を調節します。また、各種のホルモンを分泌、栄養素の体内合成や排泄などをコントロールします。

内分泌系は、何重ものフィードバック機構によりバランス調整され、人体の恒常性を保っています。

( 3 )免疫系


免疫系は主として体内に侵入した異物を排除します。

免疫系は病原微生物、ウイルス、有害物質など異物の排除、創傷の修復など人体の防御システムで、脳との情報交換を通じて一定の免疫レベルを維持しています。

体温の恒常性


哺乳動物の体温調節機能は、自律神経系が関与する生体恒常性のひとつです。

生体は体温が正常な値より高くなった場合は自律神経系や内分泌系などの制御機能によって体温を下げようとします。

人体では環境温度が高くなると、身体の表面に近い部分の血管を拡張させ、体内に発生する熱を発散し、さらに汗を出して気化熱で温度調節をします。

逆に体温が低くなった場合はふるえ(悪寒)や代謝の亢進による発熱によって体温を上げようとします。

人体では環境温度が低くなると、皮膚血管を収縮させて熱の発散を防ぎます。

感染症に罹った人体の体温が上がるのは、炎症物質の種類によって体温調節の目標温度が高くなるからです。これは病原体が熱に弱い性質を利用した防御活動と考えられています。解熱薬は体温の目標温度を下げることによって解熱させます。

免疫の恒常性


生体は外部から侵入する病原体から自己を守る防御機能としての免疫機構を備えています。

免疫機構は、外部病原体から自己を守るために免疫を亢進させる系と、過剰な免疫亢進を防ぐ免疫抑制系とが一定のバランスを保って機能しており、これを免疫恒常性と言います。

免疫系は自己と非自己とを完全に区別することができません。免疫機能が亢進しすぎた場合には、過剰な炎症反応が、本来は異物とみなす必要のない物質や有益な共生微生物までも過剰に攻撃してしまいます。

最悪の場合には生体自身が産生した物質や生体自身を異物とみなして攻撃し、結果 としてアレルギー性疾患や自己免疫疾患を発症してしまいます。反対に免疫抑制系が働き過ぎると、侵入した病原体によって生体自身が侵されてしまうことになります。

免疫系は脳との間で密接に情報交換をしているために、生体の心理状態の影響を受 けやすいと言えます。生体が強いス トレスを受けた場合に神経の作用で免疫の恒常性が保てず、様々な疾患を発症するのはこのためなのです。


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