犬は元来「群れ」で暮らす動物です。群れの中にはハッキリとした順位があり、最も順位の高い存在が「リーダー」と決められます。リーダーは外敵から群れを守るなど、メンバーの安全を保障すると同時に、食料確保の主導的役割を果たしたりします。
リーダーと認めさせることの大切さ
犬は強いリーダーが率いる群れに好んで身を置きたがるものです。リーダーには「強さ」が求められるのです。
家庭の中では、犬は家族全員をひとつの群れと考え、通常は家族の長をリーダーと認め、リーダーを頂点として従順で絶対的な服従心を持つようになります。つまり飼い主やトレーナーは犬に対して専制君主的であることが必要で、民主的であってはならないのです。
もしその関係において明確な主従関係が確立していない場合には、犬は飼い主に対して服従しないだけでなく、優劣の逆転をはかって挑戦的な態度をとることさえあります。
ですから、あらゆるトレーニングの開始に先立って確認していかなければならないのは、犬にとってトレーナーが尊敬に値するリーダーであるかどうかということなのです。この主従関係が成立していない場合、トレーニングの成果を上げることは非常に難しいといえるでしょう。
リーダーと認められる方法とは?
トレーニングとは、犬が本質的に持ち合わせている劣位時における服従本能を、人間が手を加えて引き出すことを目的として行われるもので、飼い主やトレーナーと犬との主従関係を明確にさせることは、トレーニングの成果に大きく関係してくるのです。
この主従関係を犬に認めさせる方法としては、次の方法が有効です。
〇犬の食事は家族の食事の後に与える。
〇食べ物は余るほど与えない。
〇犬の背を下にして寝かせ、腹部を撫でてやる。
〇犬の口吻を軽くつかみ、リーダーの優位を認めさせる。
〇犬と同じ場所で寝ない。
〇遊びといえども、先にリーダーが手を引かない。
〇犬を抱き上げる。
〇大型犬の場合は馬乗りになる。
〇犬の目を見つめる。
〇犬の首を押さえる。
〇犬の顎を持ち上げる。
〇リーダーが先頭を歩く。
〇犬の要求を受け入れない。
これら人の優位性を示す行動は、犬が嫌がったり抵抗を受けたりしても途中でやめてはいけません。犬の抵抗によって手を引くと、まったく逆の認識を犬に与える結果となるからです。犬はトレーナや飼い主の心理状態を敏感に読み取り、態度のあいまいさをも見抜いて、折を見て支配的な立場に転じようとすることがあります。そのような時には徹底して無視することが肝要です。
犬と人との共生を実現させるためには、「リーダーとして認めさせること」が何よりも重要であり、犬の多くの問題行動は、この原則が貫かれないことが原因といえます。ただ、幼犬への体罰について逆効果となる場合もあるので、充分な注意が必要です。
ホールドスティール(束縛制止法)
ホールドスティールとは、飼い主が座らせた犬の後ろに回り、そのまま犬の背後から抱き抱えるという、犬の行動を束縛するトレーニングです。ホールドスティールは飼い主と犬との明確な主従関係を確立させるため、犬の抵抗によって中断した場合は、むしろ逆の認識を与えてしまうことを注意しておく必要があります。
ホールスティールの目的は、リーダーである飼い主に安心して身体を預け、信頼関係を築くとともに服従本能を育て強化することです。犬が束縛された状態に甘んじ、落ち着くまで何分でも抱え込んでおきます。ここで重要なのは犬の自由を束縛することであって、終始押さえつけることではありません。
また、このトレーニングは毅然とした態度で行うことが肝要です。飼い主に支配権があることを分からせるためです。飼い主の力の強さを身をもって認識した犬は、以後飼い主に反抗的な態度をとることはなくなるはずです。
一般社団法人国際家庭犬トレーニング協会
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