受容から共感へ

カウンセラーは受容した相談者の気持ちに対し「共感」しなければなりません。

「共感」と「同情」は混同しやすい言葉ですが、共感はあくまでも受容した気持ちを感じるのであって、相談者と同じ感情になるのではない点が同情とは異なります。



「共感」とは、あたかもカウンセラーが相談者自身であるかのように感じることで、この場合でもカウンセラーとしての感情は、はっきりと別に存在することが重要です。

カウンセラーの中で「共感」と「同情」の境界線が不明確になり、相談者の感情にカウンセラーが押し流されてしまったり、相談者の感情をそのまま背負ってしまってはなりません。

「カウンセラーも同じような気持ちで相談者のそばにいる」ということを伝えることで、カウンセラーと相談者が一緒になって問題の解決に向かって行けるのです。

共感と同調の違い


ペットの死について相談者が「もっと注意すべきだった」と言った場合、カウンセラーは「そうですね、もっと注意すべきでしたね」と相談者の自責の念に同調してはなりません。

このやりとりは一見、共感しているようにも見えますが、「もっと注意すべきだったと反省している気持ち」に共感し、その気持ちを受容することが必要なのであって、安易に相談者の言葉である「注意すべきだった」に同調してはならないということです。

カウンセラーも「注意すべきだった」と同調すると、悲嘆している相談者は更に罪悪感を深くする結果となるでしょう。

個人的にはカウンセラーが相談者の行為について批判的な考えを持ったとしてもやむを得ないことですが、相談者を支えることがカウンセラーの務めであることを忘れてはなりません。

共感的理解を示す


カウンセラーは、愛するペットを喪失して悲しみの淵にある相談者の「ペットを喪失した悲しみ」を理解したり、同意するのではなく、相談者が「悲しい気持ちであること」を受け止めることが大切です。

相談者の私的な内面をカウンセラーも感じることこそ、カウンセリングの基本的態度なのです。

ペットロスに苦しむ人の多くは、ペットを喪失した自分の「悲しみ」が周囲に理解されない(受容されない)ことに苦しんでいるのです。ペットを喪失した悲しみに加えて、自分が周りの人に理解されていない悲しみが更にペットロス症状を重くします。

カウンセラーに求められるのは、「どんなあなたであっても私はあなたの存在を認めますよ」「辛いでしようね、よかったら話を聴きますよ」というスタンスです。

「辛いでしようね」という言葉で相談者の悲しみを受け止め、「話を聴きますよ」という言葉で相談者を受け入れる準備があることを伝えます。

「よかったら」 という言葉も重要です。この言葉は、あくまで主導権を相談者に持たせて、話せる心境になったらいつでもカウンセラーが受け入れてくれるという安心感を与えるのに役立ちます。

一般論としては 「何ごとも時が経てば忘れられる」 というのは正論かも知れません。しかし、慰めのつもりであっても、相談者に対しカウンセラーが発すべき言葉ではありません。

ペットを喪失し悲嘆の渦中にある相談者は、「忘れられる」日を待っているのではなく、忘れたくないのです。「忘れられる」 までの時間ではなく、「今」が苦しいのです。

カウンセラーが 「時が経てば忘れられる」 という考えで望むカウンセリングでは、相談者とカウンセラーの間に良好な信頼関係が築かれることはなく、相談者は反感を抱くばかりでしょう。

時の経過を経て、相談者自身が、素直に「過去の思い出」として振り返ることができる日まで、この事実は理解し得ないのです。

相槌(あいづち)と頷き


相槌と頷きは、相手の話をきちんと聴いているという意思表示として日常的に使われます。

親しい人との日常的な会話では、誰もが無意識で相槌をうち、頷いています。対話相手の話の合間に首を縦に振り、繰り返し短い言葉を返すことで会話がスムースに進むのです。

カウンセラーとして相槌をうつ場合は、座位置の関係で相談者の視界にカウンセラーの姿が入らないこともあるので、できる限り無言ではなく、「うん」などと声に出して行うのが望ましいでしょう。

相槌のバリエーションも多い方が望ましく、言葉やその声のトーン、リズムなどを上手く使い分けることがポイントです。同じ言葉であっても、繰り返したり、伸ばしたり、抑揚をつけることで大きく印象が変わります。

相槌と頷きは、相手の話のペースに合わせ、言葉の切れ目にぴたりと合わせることが重要です。

相槌が早すぎると相手は話の腰を折られた気分になり、遅すぎると話を聴いているのかと不安になり、いずれの場合も話す気力が失せてしまいます。また、同じタイミングで一本調子の相槌を繰り返すと、事務的、機械的と感じられ、相談者の心は開きません。

話の要所に 「なるほど」 「ごもっとも」 「同感です」 「おっしゃる通り」 など、相談者の言葉を肯定する語を挿入することも効果的です。

また、相談者が話の中で頻繁に使う言葉を織り交ぜて使うことでも親近感がわきます。この場合は、相談者に 「自分の口調を真似ている」 と感じさせるほどに多用しないように気をつけましょう。


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