子犬の社会化期とは、犬が社会の中で自分以外の存在と生きていくために、犬自身がさまざまな出来事に対応できるよう、あらゆることに慣れる時期のことをいい、社会適応期ともいいます。
生後45~90日齢の子犬は、母犬や兄弟犬と過ごす過程で、群れの中で生活するためのさまざまなルールを自然に身につけます。子犬の社会化期、つまり社会に適応するための時期に最も大事なテーマは、犬の群れ(社会)の中で誰がリーダーであるかを知ることと、自分の序列を認識することです。
犬の社会においてリーダーであるための資格は「強い」ということです。犬は自分より強い犬をリーダーと認め、リーダーに従うことで群れの中の自分の居場所を確保します。また、群れの中で子犬たちは積極的に「争いを回避する」知恵を身につけます。
子犬が社会化期に学習したことは、そのまま、人間と犬が社会の中で一緒に生活していくために大変重要な事柄です。
排泄を学ぶ
社会化期の初期には、子犬は排泄は自分の寝床から離れた場所で行おうとします。これは子犬が身の回りを清潔にしようとする本能によるものです。この時期に排泄するために移動できるスペースがない環境で育つと、糞尿の汚れに対して無頓着になり、後でトイレのしつけで苦労する場合があります。
力加減を学ぶ
子犬は兄弟犬などの他の犬とじゃれ合うことで多くのことを学びます。たとえば一頭が相手の体を強く噛み過ぎると、噛まれた子犬は甲高い悲鳴をあげます。この相手の反応によって、噛んだ犬は度が過ぎたことを知ります。子犬はこのような遊びを繰り返し経験することによって力加減を学び、仲間と共に暮らしていく社会性を養っていくのです。
こうした力加減を学習しないまま成長した犬は、遊びの中でも興奮すると激しく噛みつくようになります。
仲間との接し方を学ぶ
子犬にも、人間でいうところの「物心つく」時期があり、その頃に兄弟犬などと接することで、自然と犬同士の付き合いや関わり方を学習していきます。
この時期に母犬や兄弟犬と引き離されたり、隔離された状態で育つと、犬同士の付き合い方がよく分からず、他の犬に会った時に不安と興味が葛藤し、相手に向かって吠え続けたりします。
人との接し方を学ぶ
子犬は、人の優しい態度や、それに対する母犬や兄弟犬の反応を見ることによって、人との信頼関係を築いていきます。この時期に強い態度で叱ったり体罰を与えたりすると、成長期も臆病で過度に用心深かったり、人間不信に陥ったり、問題行動を起こしやすくなります。逆にこの時期に過度に甘やかすと、後に分離不安症となることがあります。
また、この時期に人と全く接することのなかった犬は、人に対して強い警戒心を持つようになるため、その後のトレーニングは困難となります。
現代の日本では商業主義に偏り、社会化期にペットショップの陳列の中で過ごす子犬が多いため、適切な社会化期を過ごすことが出来ない例が増えています。そのような子犬が家庭の中で起こす問題行動を矯正するのは、非常に困難といえます。
家庭犬自身のためにも、犬を家族の一員として迎える人間のためにも、ペット業界の商業主義に偏り過ぎた習慣を考え直すべき時期を迎えているといえるでしょう。
一般社団法人国際家庭犬トレーニング協会
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