実験動物の確保

現在日本では、下記のような形で実験動物を確保しています。

1.実験動物として厳しく遺伝、環境コントロールを行い繁殖生産する。
2.海外で生産された実験動物を譲り受ける。
3.家畜として飼育されている動物を研究用に流用する。
4.自然界から捕獲して研究用に供する。
5.自治体によって捕獲されたイヌ、ネコを譲り受ける。

実験に使用されることを目的として遺伝的、環境的コントロールを加えて多数の動物を繁殖生産する作業は容易なことではありませんが、その信頼性において、ほとんどの動物実験は生産された実験動物によって行われています。

例えばある種の薬物の投与実験で、仮に5単位と10単位を投与した動物AとBにおいて、その反応の差が純粋に投与薬物量の差に基づく結果であるためには、AとBの間にあらゆる要因の差がないことが要求されます。すなわち実験動物には、遺伝要因の同一性や環境要因について強い規制が求められるのです。

また、反応の 「正確性」 を重視すればするほど、同一テーマについて多数の動物を使って実験が反復的に行われなければなりません。

これらの理由から遺伝的、環境的要因が共通である実験動物が大量に必要とされているのです。

実験動物の系統


実験動物では遺伝的均一性を確保するため 「系統」 が重要視されます。計画的な交配によって、ある種の特徴を備えた元祖の明らかな一群が維持され、それぞれに適した各種の実験に供されます。

近交系


兄と妹による交配を20世代以上継続して維持されている系統を近交系といい、多くはマウスやラットなどのげっ歯類です。動物種によっては強度の近親交配の継続は困難であることも多く、イヌやネコでは20世代の経過に十数年を要します。

5年以上一定の集団内でのみ繁殖を続けた系統のことをクロースドコロニーと呼び、大量の動物を必要とする実験に好都合とされています。

近交系マウスは最近の医学や生物学の研究に欠くことができないものですが、その育成、生産は厳格な管理体制と年月を必要とすることから、国産では需要に追いつかず、輸入に頼っているのが現状です。

ジャクソン研究所


アメリカの非営利団体ジャクソン研究所は、世界各国の研究者に実験用マウスを供給する団体として知られています。

特に遺伝的に肥満になりやすいマウス、心臓病になりやすいマウスなど「疾患モデル」と呼ばれる突然変異種約400種については世界で唯一の供給元であるため、この研究所のマウスを使うことによって、世界的な医学研究の比較を可能にしているといえるでしょう。

現在日本では、ジャクソン研究所から譲り受けたマウスを10世代近く繁殖を重ねた場合に、突然変異などで元の系統とは微妙に変わってしまう恐れがあるため、自家飼育を数代で打ち切り、再び同研究所から譲り受けています。

1989年、同研究所で火災が発生、マウス50万匹が焼け死ぬ事故がありました。凍結受精胚が無事であったことは幸いでしたが、元通りにマウスが供給できるようになるまでには5~7年程の月日を要したため、世界的に研究の遅れなどを心配する声が広がっていました。

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