動物を飼育するという経験は、子供の情緒的な発達のために好ましい影響を与え、また精神衛生上も役に立つという研究は多くあります。
子供の社会性の発達は、児童期に 「仲間としての動物」 が存在したかどうかの影響を受けると言われています。幼い頃に動物を飼育することにより、生き物に対する無条件の愛護の気持ちや相互依存意識、また仲間としての感情などを育てる効用も論じられてきました。
近年の少子化の結果として、家庭で飼育されている「仲間としての動物」が年少者の兄弟の役割を果たし、孤独感の解消に役立っているとする見解もあります。
大都市圏の飼育率の減少
近年、動物の飼育家庭は増える傾向にありますが、大都市圏では住環境に関する制約もあり、むしろ飼育率が低くなっています。
平成2 2年の内閣府の世論調査でも、「ペットを飼育していない人」に対して、「飼育しない理由」を質問したところ、「飼育が禁止されているから」「近所に迷惑をかけるから」「家や庭が狭いから」など、住環境に関連する答えが多く見受けられました。
年少の頃に動物との触れ合う体験は、精神性の発達に多大な影響を及ぼし、動物愛護の気持ちを育てることに役立つと考えられています。近年、少年による凶悪犯罪が問題とされていますが、その前触れとして少年の「動物虐待」が目撃されています。
世論調査でも、「ペットの飼育が良いと思う理由」に対し、「子供たちが心豊かに育つから」という答えが多くあります。
内閣府の世論調査(平成2 2年)
◆ペットを飼育しない理由は?
・充分に世話ができないから 46.2 %
・死ぬと別れが辛いから 37.0 %
・集合住宅であり禁止されているから 25.2 %
・近所に迷惑がかかるおそれがあるから 18.5 %
・家や庭が汚れるから 13.6 %
・お金がかかるから 10.4 %
・動物が嫌いだから 10.2 %
・ペットから人に感染する病気があるから 6.8 %
・家や庭が狭いから 6.8 %
◆ペットの飼育が良いと思う理由は?
・生活に潤いや安らぎが生まれる 61.4 %
・家庭がなごやかになる 55.3 %
・子どもたちが心豊かに育つ 47.2 %
・育てることが楽しい 31.6 %
・防犯や留守番に役立つ 25.7 %
・お年寄りの慰めになる 24.7 %
・ペットを通じて人付き合いが深まる 23.8 %
・友達になれる 18.0 %
子供の心理治療とAAT
ひきこもり児童、情緒障害児童、自閉症児などの治療に動物を介在させる試みは、欧米を中心に盛んに行われています。
治療の現場に動物を介在させることによって子供の緊張を解き、診療に必要な雰囲気を作りやすいことや、医者と子供との意思の疎通や会話が円滑に進むなどの効果があることは明らかです。
しかしながら、さらに進んでAAT(動物介在活動:アニマル・アシステッド・アクティビティ)による症状の改善効果という点では、確かな検証が終わっているわけではありません。
心理治療では治療の効果を数量的に示すことが困難であることから、医療成果も抽象的な文言で報告されることが多いといえます。
さらに、現代医学の関心は別の方向に向いており、子供の心理治療に関わる医療関係者の多くが、AATを取り入れる試みについて積極性を欠くのが現状であることは、残念だと言わざるを得ません。
この分野の研究成果が広く子供の心理治療の場で生かされるためには、学術的な研究や、検証が行われるための制度を整備することが必要と考えます。
一般社団法人国際家庭犬トレーニング協会
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