欲求段階説

ペットロスカウンセリングを有意義なものにするために、カウンセラーは、人にはどのような欲求があるのかを知っておく必要があると思われます。ここでは、自己実現理論と呼ばれる「マズローの欲求段階説」をご紹介します。



マズローの欲求段階説


アメリカの心理学者、アプラハム・マズロー博士は、人間は「自己実現に向かって絶えず成長する生きもの」であると仮定し、人間がもつ内面的欲求を5段階の階層に分けて理論化しました。

1.生理的欲求


生命維持のための「食欲」「性欲」「睡眠欲」等の本能的、根源的な欲求で、持続的に必要であり、人間の三大欲求と言われるものです。この欲求が満たされない場合、人間は生きていくことができなくなります。

2.安全の欲求


自分や家族を危険から守りたいという欲求で、「安全」「経済的安定」「良い健康状態」など、秩序だった状態を得ようとするものです。病気や不慮の事故などに対するセーフティネットなども、これを満たす要因に含まれます。この欲求を満たすために一生涯を費やす人は多いものです。

3.所属と愛の欲求


「仲間はずれにされたくない」「人から愛されたい」という欲求のことです。情緒的な人間関係、他者に受け入れられている、どこかに所属しているという感覚であり、この欲求が満たされない時、人は孤独感や社会的不安を感じやすくなり、うつ状態になりやすくなります。この欲求が十分に満たされている場合、「生理的欲求」や「安全の欲求」を克服することがあります。

4.承認の欲求(自己表出欲求)


「自分の能力に自信を持ち、集団から自分の能力を認められ、尊重されること」を求める欲求で「尊重の欲求」とも呼ばれます。尊重のレベルには2つあります。

2つの尊重レベル


低いレベルの尊重欲求は、他者からの尊敬、地位への渇望、名声、利権、注目などを得ることによって満たすことができます。マズロー博士は、この低い尊重のレベルにとどまり続けることは危険だとしています。

高いレベルの尊重欲求は、自己尊重感、技術や能力の習得、 自己信頼感、 自立性などを得ることで満たされ、他人からの評価よりも、自分自身の評価が重視されます。

5.自己実現の欲求


最高位の自己実現欲求とは、「自分の潜在的能力を最大限発揮し、顕在化させたい」という欲求です。すべての行動の動機が、この欲求に帰結されるようになりますが、この欲求は無限大で満たされることはありません。

欠乏欲求


マズロー博士は、人間の基本的欲求を低次元から、生理的欲求、安全の欲求、所属と愛の欲求、承認の欲求、自己実現の欲求の5階層に分類し、「生理的欲求」から「承認の欲求」までの4階層に動機付けられた欲求を「欠乏欲求」と名づけました。

人は欠乏欲求が満たされない時に不安や緊張を感じます。また、満たされない欲求を充足しようと行動(欲求満足化行動)します。

その上で、欲求には優先度があり、低次の欲求が充足されると、より高次の欲求へと段階的に移行するものとしました。例えば、高次欲求の段階にいる人が、病気になるなどして低次の欲求が満たされなくなると、一時的に段階を降りてその欲求の回復に向かい、その欲求が満たされると、再び元居た欲求の段階に戻るというものです。

このように、段階は一方通行ではなく、双方向に行き来するものと考えました。

自己実現を果たした人の特徴


マズロー博士は、最高次の自己実現欲求のみ、一度充足したとしてもより強く充足させようと志向し行動するとしました。また、欠乏欲求と自己実現欲求は、質的に異なるものと考え、欠乏欲求がかなりの程度満たされると、終局的に自己実現の欲求が現れるとしました。

自己実現を果たした人の特徴として、客観的で正確な判断、自己受容と他者受容、純真で自然な自発性、創造性の発揮、民主的性格、文化に対する依存の低さ(文化の超越)、二元性の超越(利己的かつ利他的、理性的かつ本能的)などを挙げています。また、社会的、相対的評価よりも自己評価を重視するようになり、自分に何ができるのか、自分がいかに満足できるかが大切と考えるようになると述べています。


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