犬のオペラント式トレーニング技法

アメリカの心理行動学者スキナーは、1937年にネズミを使った実験を行い、「動物の応答行動の仕方は、報酬の与え方によって変わる」ということを発見し、これを「オペラント」と呼びました。




オペラントとは、動物がある行動を行った結果、環境にどんな変化が起こったかを経験することによって、その変化をさせるための行動を学習することをいいます。例えば、動物がレバーを押せば好物が出てくるというような仕掛けがある場合、好物を得た経験を繰り返すことによって、自発的にレバーを押すようになる行動のことです。

「オペラント式トレーニング技法」とは、これを犬のしつけや訓練に応用した方法のことをいいます。

オペラント行動


オペラント行動とは、その行動をすることによって生じた「環境の変化」に応じて、その後にその行動を行う頻度が変化する行動をいいます。例えば犬に「スワレ」という声をかけ、犬が「スワレ」の姿勢を取ったら、直後にモチベーターを与えます。これを繰り返し行うと、「スワレ」に対して犬が座る確率が高くなっていきます。

この場合、オペラント行動とは「犬が座ること」であり、環境の変化とは、「モチベーターが出現した」ことです。

オペラント行動を利用して、犬に自発的、喜求的な行動をさせるトレーニング方法を、「オペラント式トレーニング技法」といいます。これは、その犬の好物(モチベーター)などを与えてトレーニングする技法で、これは家庭犬のトレーニングに最も適した方法であるといえます。

オペラント条件づけ


オペラント条件づけとは、オペラント行動に続く環境の変化に応じて、その後の自発行動が変化する学習のことです。これは日常生活のいたるところで偶発的に起きています。

行動随伴性


ある行動を起こし、それによって良いことが起こった場合(または嫌なことが無くなった場合)、その行動は繰り返される可能性が高くなります。

逆に、ある行動によって嫌なことが起こった場合(または良いことが無くなった場合)、その行動が繰り返される確率は低くなります。

行動随伴性とは、オペラント行動の「自発頻度の変化」と、それが自発された直後の「環境の変化」との関係のことをいいます。

オペラント式トレーニング技法によって「スワレ」を教える


①トレーナーはモチベーターを手に握り、黙って低い位置に保持します。犬にモチベーターに対して興味をもたせます。

②犬はモチベーターを得るためにいろいろな行動を取り、落ち着きなく動きますが、それらは無言で放置し、犬が偶然「座った」場合にのみ、手を広げてモチベーターを与えます。

③これを無言で繰り返すうちに、犬は「座った」時にモチベーターがもらえることに気づきます。

④犬は、モチベーターを獲得するためには「座る」行為が必要なことを学習し、獲得するために「座る」ようになります。

⑤犬が自発的に座るようになったら、座った時に「スワレ」と命令します。

この場合、犬が「自発的に行う」ことが重要です。自発行動がモチベーターの獲得に繋がり、スワレの命令語が強化刺激になって、犬は瞬時に命令語に応答するようになります。

⑥モチベーターを与える頻度を不定期にしていくことで、モチベーターがなくても「スワレ」の命令語によって喜んで座るようになります。

オペラント式トレーニング技法は、犬が自発的に、また積極的にしつけや訓練に取り組む方法といえます。この方法であれば犬も嫌がらないため、一般家庭犬で取り入れるトレーニングとしては最適な技法であるといえるでしょう。


一般社団法人国際家庭犬トレーニング協会
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