犬のトレーニングの種類と必要性

犬をトレーニングするためには、犬の心理や能力、性質を充分に理解することが大切です。トレーナーはまず犬一般の「本能行動」を理解し、それをトレーニングに応用する手段を身につけなければなりません。



犬の本能行動

すべての犬が持って生まれていると考えられる行動を、犬の「本能行動」といいます。具体的には以下のようなものです。

〇前へ出たがる
〇所有欲が強い
〇嫉妬心が強い
〇警戒心が強い
〇走る物を追う
〇物を運ぶ
〇穴を掘る

犬の行動のすべては、人間からしてみれば利己的なものといえます。犬は自分が不利になることや不快を伴う行動を自分から行うことはありません。ですから、もし一定の期間までに飼い主やトレーナーによってコントロールされることがなければ、これらの本能行動のみが増幅され、やがてはそれが行動のすべてを支配するようになってしまうでしょう。

トレーニングの主な目的は、そのような犬の本能行動を制限することで、子犬が持っている人に対する「親和性」や「服従性」を引き出すことにあるといえます。

トレーニングの種類

トレーニングには大きく分けて2つの方法があります。1つを「強制トレーニング」といい、もう1つを「誘発トレーニング」といいます。

①強制トレーニング

犬がトレーナーの意図通りに行動するよう、視符声符と呼ばれるものを使い、同時に物理的に手助けをする方法を「強制トレーニング」といいます。

強制トレーニングを繰り返し行うと、犬は次第に強制を避けるようになり、自ら決められた体制に入ることを覚えていきます。

②誘発トレーニング

犬がトレーナーの意図に添う行動を自ら進んでとるように仕向ける方法を「誘発トレーニング」といいます。強制によって決められた体勢をとらせるのではなく、犬が好んでその体勢に入るタイミングをとらえて視符や声符を与えるトレーニング方法です。

強制トレーニングでは、トレーナーは犬に対して厳しい態度をとることが必要ですが、飼い主が愛犬に対して、一貫して厳しい態度をとることはなかなか難しく、そのため訓練所で訓練を受けて家庭に戻った犬が、家庭では命令に従わないというようなこともしばしば起きるのです。これはトレーナーと飼い主の犬に対する態度の差が大きいことが原因と考えられ、そこが強制トレーニングの限界ともいえます。そのため誘発トレーニングが今よりさらに開発され、一般的なトレーニング方法として定着する日も近いのではないかと考えられます。

※視符と声符

「視符(しふ)」とは、トレーナーが手や体を動かし、一定の動作として犬の視覚機能を刺激し命令を伝えるサインのことです。犬の目で読み取らせるために飼い主が発するゼスチャーをこう呼びます。

「声符(せいふ)」とは、トレーニングの時に命令に使用する用語のことです。犬の耳で聞き取らせるために飼い主が発する声によるサインをこう呼びます。


体罰は必要?

現代では、愛犬家は体罰を伴う調教的トレーニングは好まない傾向にあるといえます。しかし、緊急の状況において、重度の問題行動を中止させる方法が体罰と見まがう強制力を用いる以外に方法がない場合もあることは否定出来ません。時と場合、また犬の行動の程度に応じて、適切な強制力を取り入れることは考えていくべきものかもしれません。


トレーニングを行う目的

犬が自分の身の危険を回避するために攻撃的になることは、犬の本能そのものです。トレーニングとは、その本能を、後天的に身につけた人間との親和性によって抑制することが可能かという難題に挑むことであり、それがトレーニングを行う目的であるともいえるのです。

一般社団法人国際家庭犬トレーニング協会
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