どんなことを考え、注意しながらトレーニングを始めれば良いのでしょうか?
犬のトレーニング方法を考える際には、その犬に合った最善のものを選択する必要があります。
トレーニング方針を決める
犬にはその「犬種」によって特徴的な性格の違いがあり、「個体」によっても異なる性格を持っています。また、飼育される「環境」が犬の性格に与える影響も大きく、またトレーニングを開始する「年令」も考慮する必要があります。
ですから「犬種」「個体」「環境」「年令」に合わせて、その犬に相応しいトレーニング方針が決められるべきなのです。
「犬種」に合ったトレーニングを
私たちが日ごろ接している家庭犬の多くは、ある目的のために改良されてきた歴史を持ちます。つまりその目的に従って長い年月をかけてその特性を引き出し、固定化させたものですので、トレーニングをしようとする場合には、その犬種が本来、何の目的で改良されてきた犬なのかを知ることが重要です。その特性を無視したトレーニングは、もともと無理があるといえるでしょう。
「個体差」を見極める
犬はそれぞれ異った性格を持っています。例えばある出来事に対して、ある犬は過剰に反応し、ある犬はおとなしかったりと、同じ犬種であってもその反応はさまざまです。それが犬の個体差、つまりその犬の性格といえます。
犬の個体差の見極めはトレーニングの第一歩です。これは犬の日常行動の観察を通して見極めていくのが理想であり、その意味では飼い主がトレーナーに最も相応しいといえるでしょう。
またトレーナーは、トレーニングの進行に応じて冷静に犬を評価、観察するとともに、犬の天分をはかり、その能力の限界を知ることが必要です。犬の能力の限界を越えたトレーニングをしないことは、犬とトレーナー双方にとって大事なことです。
トレーニング「環境」の大切さ
トレーニングに際しては、犬を取り巻く環境の整備も必要になってきます。トレーナーだけでなく、犬に関わる人全員が同じレベルで犬に接することが重要なのです。
そして犬の安全を考えて、電気コードの露出部分をカバーしたり、飲み込みそうな小物をあらかじめ排除するというような配慮をしておく必要があります。また、家庭に小さな子供がいる場合には、「寝ている犬には手を出さないこと」「食べ物を与えない」などの決まりごとを守らせる必要もあります。
このように、周囲の多くの人の理解と協力がトレーニングには必要不可欠になってきます。
トレーニングに適した時期
大型犬や小型犬など、犬種によって多少の差異はありますが、トレーニングに最も適した時期は、生後90日を経た頃とされています。この月齢の子犬は好奇心や人に対する親和性が旺盛で、また習慣を通して行動が無理なく修正できるため、トレーニングに相応しい時期といえるでしょう。
犬は一般的に臆病な動物で、見慣れないものはすべて警戒します。感受性が特に強い生後45日~90日の間には、人間社会のいろいろな出来事に慣れさせておく必要があります。この時期に多くの他人や多くの犬に接する機会を増やすことで、成長後に起こり得る問題行動を防止することが可能になってきます。
また、飼い主のはき違えた愛情は、トレーニングを失敗させる結果へとつながります。もともと支配欲を持とうとするのが犬の本能であり、その支配欲を封じて従属性を高めるのがトレーニングであるわけですが、その際に「かわいそう」という気持ちが態度に出ると、犬の本能は従属から支配欲へと転向することになり、トレーニングがうまくいかなくなる原因となるのです。
また、成犬になってからではトレーニングは無理だと思われる風潮がありますが、そんなことはありません。成犬になって悪癖がある場合に矯正をするとなると、幼犬よりは困難だということです。現実的にトレーニングの必要性を感じるのは、成犬になってからの問題行動を発見した時である場合が多いと思われます。トレーニングは何歳になってからでも可能で、また、したほうが良いのです。
日常生活の中でトレーニングを
何か問題行動を起こしたことがきっかけで突然トレーニングを開始するというのは、人間にとっては不自然でなくても、犬には通用しないものです。ですから、日常生活のすべての場所がトレーニングの場だと考えて、常日頃から気をつけておくことが大切です。
幼児犬の時に良いトレーニングの場を与えられなかった場合、成長後に問題行動を起こすことが多くなります。飼い主は常に自分がトレーナーであることを自覚し、良き指導者として犬に接することが求められます。
幼犬のころから首輪とリードを
飼う場所は室内だけと思っていても、散歩させたりトレーニングをする場合には屋外に出ることになります。その時のために、首輪やリードは幼犬のことから付けて慣らしておく必要があるでしょう。
首に異物を付けることは、幼犬であっても嫌がるものです。ですから最初は太めの軽い紐などを結んで慣れさせるのが良いでしょう。気にしなくなった頃に細めの首輪に付け替えて、さらに慣れさせるのです。
また散歩を始める場合も、犬が勝手な方向へ行った場合はリードを逆の方向に引き戻し、人間の進もうとする方向に従わせることが大事です。決して人間が犬の後を追うようなことのないよう、幼犬時から気をつけましょう。
一般社団法人国際家庭犬トレーニング協会
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