各犬種の原産国において公に純粋犬種として認め、その純粋性を明らかにするために「犬種標準」を制定し、それが国際的に認められた犬種のことを「公認犬種」と呼んでいます。
公認犬種の認定基準
特定の犬種を公認するか否かの規準は、各国を代表するケネルクラブがそれぞれの規約によって決めており、英国の公認犬種が米国では公認されていない例や、逆の例などもあります。
例えば日本原産犬種としての秋田犬、北海道犬、紀州犬、四国犬、柴犬、甲斐大、日本での改良犬種である狆、日本スピッツ、日本テリアなどのすべてが、海外のケネルクラブで公認されているわけではありません。また、原則的には原産国の「犬種標準」が尊重されることになっており、非原産国で改訂することはできません。
現在、地球上では700以上の犬種を数えることができ、さらに増える傾向があります。
「認知」と「公認」の違い
日本で発行されている犬種図鑑などでは、日本(JKC)の他、英国(KC)や米国(AKC)の公認犬種を扱うものが多く、現状では統一されていません。
このため純粋種として公認されている犬種の数は各国のケネルクラブにより異なっており、変動も多く。また、公認はされていても実際に登録が無い犬種もあります。そのため各国の犬種団体は、新犬種の「認知」と「公認」は別のものと考えています。
AKCのミスレイニアスクラスのように、公認を前提とした保留のグループを設け、条件が整った段階で公認する例も見られます。
例外のケースではありますが、咬傷事故などが多発する特定の犬種に対し、国の政策に連動して新規繁殖(登録)を認めないなどの対策がとられることもあります。
犬種標準(スタンダード)とは
原産国において特定犬種のサイズや特徴を数値化、明文化してその犬種の「規準」とすべく制定されたものを「犬種標準」と呼びます。
いかなる犬も、その寿命には十数年と限りがあり、特定の犬種の「規準」として生体を後世に残すことは不可能です。そのため犬種標準の制定は、純粋犬種を後世へ保存継承する上で欠くことのできないものといえるでしょう。
生物の進化の原則から言えば、犬種標準は不変のものではあり得ず、原産国を離れ当該犬種が改良繁殖された場合に、実質的には同一犬種でありながら各国ケネルクラブにより犬名が変更され、「標準」が書き替えられる場合も少なくありません。
また使役用途に由来する犬種の理想的な体格や体形が、改良国での用途が愛玩目的に変化するとともに「小型」化が促進されるケースが多く、同一犬種の理想サイズが国によって異なる例もあります。
犬種標準における課題と問題
原産国の標準尊重を貫くのか、改良国による変更を認めるのか、犬種標準の国際的な統一が、各国ケネルクラブの当面の課題となっています。
さらに 断耳や断尾を禁止している国と容認する国など、伝統や文化の違いも犬種標準における問題として浮上しています。
また、特定犬種の小型化が病的なまでに進むなど、人の趣向が入り込むことについても、犬種標準の表現が 「小さいほど望ましい」 と考えられるだけに弊害と考えられています。一般的な犬界の傾向としては、近年は 「ミニチュア」 犬種作出の気運が強いといえます。
KCにおける改訂
2009年1月、 KC (イギリス) はプルドッグを始めとする209犬種の犬種標準を改訂しました。
この改訂は、英国BBC放送が制作した犬の繁殖方法の問題点を扱ったドキュメンタリー番組を発端としてなされたものです。
番組の中では、品種改良のための近親交配が繰り返され、重度障害を抱える子犬が生まれているケースが報告されました。そして、「ブリーダーはコンテストで優勝するため、数十年にわたり無理な近親交配を重ね、犬の姿を変形させ、不健康な犬を繁殖させている」と批判して、大きな反響を巻き起こしました。
これに応えるかたちでKCはドッグショーでの審査基準を外見の良さから健康重視に切り替えると発表、209犬種の審査基準を改正しました。
この基準改正によって英国を代表するプルドッグは、小さく引き締まった顔、長めの脚、細い胴体、と現在からは想像できない姿に生まれ変わりました。
プルドッグはこれまで頭が大きくてあごがたるみ、しわが多くて深い方が「美しい」とされてきました。しかし呼吸困難などの弊害も大きく、不健康で平均寿命は短かかったため、新基準では、「呼吸障害を起こさないようスリムでしわも適度に」と定められました。しかしこれには、「プルドッグが全く別の犬になってしまう」との反発もありました。
ブルドッグ以外では、ジャーマン・シェパードも「前足が細すぎず長すぎず」とされ、中国原産のチャウチャウも「あまり毛が多いと暑すぎてダメ」と変更されました。
犬の頭骨の型による犬種の分類
犬の骨格の中で進化による変形が最も著しい個所は頭骨です。
各犬種の進化系統は、現存する各犬種の頭骨の型を観察することによって推察することが可能です。ストップの深浅や額溝の深さ、眼窩軸(眼窩の上端と下端を結ぶ線)の傾き、歯牙の形態など頭骨の特徴に着目し、その共通点によって犬種を分類する研究は動物分類学上の信頼性が高いといえます。
これらの研究結果は地球上の多くの犬種の移動説を高度に裏付けるものとなっています。オオカミやコヨーテは眼窩軸の傾きが大きく、さらに頬骨の位置がイヌよりも高く横に張り出しています。このため頭頂と頬骨を結ぶ線の角度が大きくなり、眼がつり上がって表情が険しく見えるのです。
犬の祖先
パリア犬型やハスキー型犬種は犬の祖先に近く、 頭骨の変化は比較的少ないといえます。頭骨の変化を観察することによって、 マスチーフ型やピンシェル型、 スパニエル型の犬には複数の型の犬種の混血があったことがわかります。
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