犬の皮膚

犬の皮膚の働きや構造について、解剖生理学的な観点から見て行きましょう。

皮膚の働き


皮膚は犬の体表面を覆い、外部刺激に対し体組織を保護しているものです。皮膚組織と被毛の合計は犬の体重の約12 %を占め、子大においては24%を占めています。また、ロ腔、鼻腔、結膜、肛門、生殖器官などの粘膜性の諸孔も皮膚です。


〇皮膚は体内の水分や電解質の消失を防止し、 体内の全ての器官に対する調整の役割を果たしています。

〇物理的、化学的、微生物学的な外部要因が体内環境に侵入する事を阻止しています。

〇血行によって体温の恒常性を保つ働きをしています。(体温調節機能)

〇皮膚は接触や疼痛、温度等の感覚器官としての役割を果たします。(知覚機能)

〇皮膚は水、電解質、ビタミン、脂肪、蛋白質等の物質を貯蔵します。(貯蔵機能)

〇皮膚は被毛、爪、表皮角化層等ケラチン質構造を作る働きをします。

〇ビタミンDの合成、血圧の調整、熱保存、熱放散、分泌、排出等の役割を果たしています。

皮膚の構造


皮膚は体表面から順に表皮層、真皮層、皮下組織で形成されます。

表皮層


表皮は皮膚の外層です。表皮はさらに上層から角質層、淡明層、顆粒層、有棘層、基底層に分けることができます。

角質層は表皮の最外層を占め、完全に角化して脱落を待つ薄い層で、基底層の細胞増殖に連動して脱落し、表皮の厚さを一定に保っています。

淡明層はケラチン化した死細胞からなる緻密な薄い層で、皮膚の厚い部位で認められ、犬の肉球では直視できます。

顆粒層は基底層で生産された細胞により構成される表皮に平行な紡錘状の細胞層で、ケラチンの合成が行われています。

有棘層はランゲルハンス細胞を有し、免疫機能を掌る表皮の中枢とも言える層です。

基底層は表皮と真皮の境界をなし、常に上部表皮の細胞を補充するため分裂を続けています。

真皮層


真皮は表皮の下にあって皮膚組織の主要なものです。表皮やその付属物に栄養を供給し、血管、リンパ管、神経、立毛筋等を包含する膠質層です。真皮は生体の老齢化に伴い減少し、真皮層が薄い部位では皮膚は薄くなります。

脂腺は立毛筋に隣接する短い排出管を持つ分泌腺で、立毛筋の収縮に連動して毛幹や皮膚表面に皮脂を供給します。皮脂は被毛の乾燥を防ぎ光沢を与えています。脂腺の働きは体調の低下や蛋白の失調等により低下するので、毛艶を見て犬体の体調を知る目安ともなっています。皮脂に含まれる脂肪酸は白癬菌等の細菌に対し殺菌力を持ちます。

アポクリン腺は真皮の深い部分にあって、犬では鼻鏡をのぞく体表全部に分布しています。犬の発汗が少ないことはよく知られていることですが、一定程度の体温調節機能を果たしています。蹠、肉球部の皮膚は円錐乳頭と呼ばれる特殊な皮膚組織で構成され、乳頭の間に汗孔 (工クリン腺) を持ち、汗を分泌します。犬の汗自体は乳白色で無臭ですが、皮膚表面の細菌類が作用して特異な臭気を発散し、これが犬独特の体臭となっています。

立毛筋は脂腺の下を通り毛包下端に結ばれた平滑筋です。自律神経により立毛筋が収縮すると毛が直立し、犬体を大きく見せ、敵を威嚇するに役立ちます。また、立毛筋の収縮により脂腺を圧迫し、皮脂の分泌を促進します。

皮下組織


皮下組織は脂肪の貯蔵庫であり、血管、神経、結合組織で構成されており、熱の絶縁体としても働いています。真皮と表皮を支持し、同時に皮膚を下層の筋肉や骨、その他の器官と結合させています。猫では着地のショックをやわらげるために、肉球の脂肪沈着が役立っています。

犬の皮膚のpH


皮膚のpHは皮膚疾患の発生と重要な関係にあります。犬の皮膚のpHは人間に比べてアルカリ性で、外界からの細菌感染やカビの発育に対する防御機能は低いと言えます。発汗の後などは更にpHが高くなり、夏季に皮膚病が多発する主因ともなっています。

細菌の繁殖好適条件と犬の皮膚の状態は、下のように近似しています。

①温度3 0 ~ 4 0 ℃が持続する
②高湿度
③弱アルカリ性~中アルカリ性
④無風の状態
⑤脂肪分 (脂腺の分泌物) がある


一般社団法人国際家庭犬トレーニング協会
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