犬の視覚

犬の視覚は、嗅覚や聴覚に比べるとかなり鈍いと言えます。他の感覚器の多くは生後まもなく働き始めますが、視覚は生後3週齢くらい経ってから働き始めます。


犬は地面に顔を低く付けて歩くためか、視界も狭く近視で、色の識別能力もほとんどありません。わずかに緑色と暗灰色くらいが分かる程度で、ほとんど白黒の世界と考えられています。その理由としては、元来夜間活動を習性としていたので、物の形さえ識別できれば良く、色は特に重要な情報でなかったためと思われます。

解剖学的にも人の水晶体4mmに比べると、犬は8mmと厚く、色覚を司る錐状細胞も少ないのです。行動学上の色覚テストからも色に対する知覚は確認されず、犬は「近視」で「色盲」であることが分かります。

各部位について


眼球の前部外表は強靭な角膜により守られています。角膜の内側に入射光量を調節する虹彩が円形に瞳孔を形成します。瞳孔の大きさは瞳孔括約筋と瞳孔散大筋により調節されます。

水晶体は眼球後縁の網膜に像を結ぶためのレンズです。近距離を見る時は水晶体の厚みが増し、遠距離を見る時には厚みを減ず構造になっています。水晶体のピント合わせをするのが毛様体です。毛様体は房水という栄養を分泌して、角膜の内側と水晶体に供給します。

硝子体はゼリー状物質で眼球全体の形を保っています。網膜の結像は視神経によって脳に伝達され知覚されます。

眼臉は強い光を遮ることや眼球を保護する役目を果たす可動性の皮膚です。上下の2枚は人間と同様ですが、他に1枚瞬膜と呼ばれる白い膜を有します。瞬膜は、普段は気付きませんが、強い光を受けたり、病気の時に眼球を覆うように出てくることがあります。

眼瞼の内側の粘膜を結膜と呼びます。結膜は血管が集中しているため赤く見えます。眼瞼を返して結膜の色を見ることで、貧血の程度を知ることができます。

涙腺は眼球保護のため涙を分泌し角膜を透明に保ち、同時に眼球表面の乾燥を防止しています。

犬の瞳孔は光に反応すると丸く縮まり、猫の瞳孔は縦に細長く縮まります。犬や猫の網膜下にはタペタム (輝板) と呼ばれる、光を反射し、わずかな光源して網膜に伝える鏡の役目を果たす器官があり、これにより人が判断できない暗闇でも行動ができます。

動き感受性


犬の目は物の形の識別能力に比べ、動いている物に対して反応が敏感なことがあります。これを動き感受性と言います。

視野の中で動いた(変化した)部分だけを増幅して感じ取る能力は、あらゆる捕食動物に備わっています。一般にサイトハウンド(視覚獣猟犬)と呼ばれる犬種や牧羊犬は、目が頭部の横についているのが特徴で、視野が広くなっています。両眼の視軸が作る角度が狭い犬種(一般に短頭犬種)では、両眼視できる分野は広いのですが、後方にかなりの見えない部分ができます。


一般社団法人国際家庭犬トレーニング協会
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