犬を褒めることの大切さ

犬のトレーニングを行う場合、トレーナーが心に留めておくべきことの一つが、「叱って、ある行為を禁止する」よりも、「褒めて、ある行為を奨励する」ほうがはるかに早く慣れるので、効果的だということです。

基本的にトレーナーは支配者であるべきなのですが、常に命令を下し、従わない場合には叱り、時に体罰を与えるというのは、好ましいことであるとは言えません。例えば、犬が人に飛びつこうとした時に「イケナイ」と言って叱るより、「スワレ」と命令して座った時に褒めるやり方のほうが、犬にとっては理解しやすいのです。

トレーナーは、トレーニングを嫌なものと思わせず、トレーナーの命令に従うことによって褒められるという、犬にとって遊び感覚の「楽しいもの」にする工夫をすることが大切です。

犬が何か勘違いや間違いの行動をとった場合、それに対してトレーナーが感情をあらわにして怒り、体罰を与えるなどしてしまうと、犬はトレーナーに対して恐怖心と不信感を抱いてしまい、トレーニングの目的が達成できなくなる場合があります。その際に犬に与えた不信感を取り除くためには、その何十倍もの信頼を得る行為が必要であるばかりでなく、それらの行為をもってしても帳消しになることは少ないと言えます。

そもそも犬には自分の行動を体系立てて考える能力がありません。犬にとっては、「これは良いことだからする」「これは悪いことだからしない」というのではなく、「これをすれば主人が褒めてくれる」「これをすれば叱られる」という要因によって行動するのです。

ですから、トレーナーは犬の行為に応じて即座に褒め、即座に叱り、その行為の善悪の区別を教えることが重要です。そしていかなる場合も、叱ることは極力控え、褒める機会を多く作る心がけで臨むことが大切です。

子犬のいたずら行為


子犬は好奇心が旺盛で、いたずら欲も強く、歯が抜け終わる時期には犬舎、家具、衣類、敷物、履物などを遊びの対象として、かじったり運んだりします。

この行為を、「子犬だから仕方がない」と放置しておくと段々エスカレートしてきますので、注意が必要です。犬にとっては、これらの行為が「許される範囲の遊び」なのか、「いたずらとして咎められる」のか、犬自身では判断することが出来ません。

犬は人間と同じような善悪の判断基準を持っておらず、人間社会の倫理観に基づく「悪いこと」を理解することは出来ません。「悪いこと」ではなく、「叱られること」として記憶するのです。

いたずら現場を見つけた場合には、叱責するべきです。叱る時は「ノー」「イケナイ」など、短い言葉を強い口調で発し、行為を中止させます。その時、犬が命令に従った場合には心から褒めてあげることを忘れてはいけません。「叱った後は倍褒める」のが鉄則で、犬を叱った後は、その犬が容易にできる動作を命じ、それに従わせ、充分に褒めるようにします。

トレーナーはいかなる場合でも感情的にならないよう心がけることが大切です。犬が一、二度繰り返しても覚えないような場合でも、叱りつけてばかりでは逆効果で、いじけた性格の犬を作る原因になります。適度に「叱る」ことは有効ですが、「怒る」ことは無用なのです。同じトレーニングを長時間にわたり行うような場合は、犬もトレーナーもイライラしてきます。そのようなことがないよう、お互いに適度な気分転換を図ることが大切です。

子犬は戯れる、噛む、吠えるという本能を持つので、それらを満たすために、犬が興味を示す遊具を与えるのも良いでしょう。いたずらは、飼い主にとってはやめさせるべきものですが、子犬にとっては遊びが心身の健全な発育に不可欠であることも忘れてはいけません。犬の生き生きとした活動を制限しないで正しい生活習慣を身につけさせるには、何よりも飼い主の愛情と根気が必要といえるでしょう。


一般社団法人国際家庭犬トレーニング協会
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