犬を褒める場合、叱る場合

犬は物事を関連づけることによって学習していきます。

例えば、ある行動の後に食べ物をもらったり、優しく撫でられることが繰り返されると、先の行動と嬉しい出来事が関連づけられ、犬にとって「良いこと」を学んでいきます。同じように、ある行動の後に罰を与えると、先の行動と嫌な出来事が関連づけられ、「いけないこと」を学んでいきます。

この「良いこと」と「いけないこと」の双方を上手く利用して、犬の行動をコントロールすることで、トレーニングを効率よく進めることができます。

ただし注意しておきたいことは、犬にとっての良いこと(褒賞)とは人間同様「何かがもらえる」ことなのですが、犬は本質的にポジティブであるため、人間にとっては意外なことが褒賞になってしまう場合があることです。例えば、うるさく付きまとう犬に対して「ヤメナサイ」と人が手で追い払う行為をした場合、犬は「かまってくれた」「遊んでくれた」と解釈し、よけいに付きまとうようになることもあります。

留守番をしている犬にとっては、飼い主の帰宅も褒賞になりますが、犬が留守中に一生懸命吠えていた場合、吠えたことと飼い主の帰宅が犬の中で関連づけられると、飼い主が外出するたびに吠えるようになります。さらに、激しく吠えたてる犬に「ウルサイ」と怒っても、犬はさらに興奮し、「飼い主も一緒に吠えてくれた」と勘違いします。

このように、飼い主は知らず知らずのうちに、犬の好ましくない行動を助長していることが多いのです。

罰はほどほどに


良いことを教えるために褒賞が効果的なように、罰も特別な行動をさせないようにするためには効果的といえます。ただし必要以上に頻繁に与えることは好ましいことではありません。特に、命令を聞かないことを理由に罰を与えることは効果的ではありません。

例えば、「スワレ」の命令に対して、犬がいつまでも立ったままでいる、フセをする、飛び跳ねるなど、「座る」以外の行動全てを叱っていると、犬はいつまでも「スワレ」の命令と座る動作を関連づけることができません。

また、一度呼んでも来ない犬に対して、「おいで、来なさい、何やってるの、コイ」など、立て続けに命令を言い、「来た」犬に対して罰を与える飼い主さんがいるとします。このような行為は、犬にとってしばしば混乱を招く原因になり、飼い主に対しての信頼をなくす結果にも繋がります。

なぜなら、犬は最終的に「来た」わけであり、命令どおりにしたのに罰が与えられたと思うからです。それが、最初に呼んだ時に来なかったことに対する罰であるとは、犬は理解できないのです。また、臆病な性格の犬の場合は、罰によってさらに問題が悪化することもあります。

罰は適切に、かつ有効に与えることが出来る場合にのみ効果があることを理解しておきましょう。そして褒賞を与えるにせよ、罰を与えるにせよ、トレーナーや飼い主の一貫性のある態度が重要であることは言うまでもありません。

タイミングが大事


褒めるにおいても叱るにおいても、タイミングは最も重要です。

犬にある行動を教える場合、その行動が行われた3秒以内に褒賞または罰を与えなければ意味がありません。犬は何分も前にした行動と褒賞や罰を関連づけることはできないからです。

外出中に犬が散らかした部屋を、戻った飼い主が叱っても、犬には何で怒られているのか理解できません。その場合、ポジティブな犬は、自分が飼い主に会えて嬉しいので、飼い主も嬉しくて興奮していると勘違いしてしまいます。シャイな犬の場合は、理由が分からないのに叱られる恐怖に怯え、飼い主を恐ろしい存在として記憶するようになります。

このように、犬がとった行動と、それに対する褒賞または罰は、速やかに与えられることが肝心なのです。トレーニングにおいても、良い結果を褒められた犬は、次の課題にも積極的に行動するようになり、トレーナーと犬の間の「良好な循環」がトレーニングの効率を高めることに繋がります。


一般社団法人国際家庭犬トレーニング協会
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