AKCの7犬種グループ(使役犬)

アメリカン・ケネルクラブ(A K C)では、犬種を、基本的にイギリスのケネル・クラブ(KC)の分類区分を踏襲した上で、7つのグループに分類しています。ここでは3番目のグループ、ワーキング・グループ(使役犬)について述べます。

③ワーキング・グループ(使役犬)


使役犬とは、狩猟以外の各種作業に従事する犬を指すものです。必然的にこのグループに属する犬は、性格は忠実で、体は頑健なものが多いといえます。

警察犬


犬はその能力ゆえに、世界中の公安機関により警察犬として利用されています。犯行現場に残された微細な遺留臭を嗅ぎ、逃走犯人の足取りを追跡する捜査をはじめとして、パトロール、守備、物品の保護、防衛、攻撃など、多くの任務を献身的にこなしています。

警察犬には嗅覚力の優れた大型の犬種が適しており、日本ではもっぱらジャーマン ・ シェパード犬が使用されていますが、ボクサー、エアデール・テリア、ドーベルマン・ピンシャー、ロット・ワイラーなどが起用されている国もあります。

犬の嗅覚を利用して、輸入荷物や旅行者の荷物の中から禁制薬物(麻薬)を発見する方法は、世界中の港湾や空港の税関検査で広く行われています。そこでは主に、薬物発見のために特別に訓練されたラブラドール種が使われています。

盲導犬


盲導犬は、文字通り盲人の目の役割を果たす極めて次元の高い目的のために訓練される犬です。盲人は盲導犬により自立性を取りもどし、社会への参加が可能となるため、盲導犬の果たす役割は非常に重要であると考えられています。

盲導犬は1900年にドイツで考えられ、第一次大戦中のフランスとドイツで本格的に訓練されました。盲導犬に向いている犬は、牧羊犬の血を受け継ぐ、性格の安定した雌犬で、高度な訓練を終えて盲人と共に生活をします。

盲導犬に求められる性格


盲導犬には服従性、勇気、粘り強さ、知力、精神的な安定が要求され、すぐ不機嫌になる犬や気まぐれな犬、知力に欠ける犬などは適しません。そのため、主にジャーマン・シェパード、ラブラドール・リトリバー、ゴールデン・リトリバーが使用されます。

盲導犬の訓練


盲導犬の候補となった子犬は、訓練に適する時期まで育てるボランティア(パピーウォーカー)の協力を経て服従訓練をこなし、生後1年を過ぎた頃からU字型の誘導把(ハーネス)を付け、主人が障害物にぶつからないように歩く訓練を受けます。

盲導犬の訓練には10カ月以上の期間が必要であり、育成には高額の費用が必要となります。それらは民間の寄付金で賄われています。

盲導犬の貸与


盲導犬、使用の希望を申し込んだ順に無償で貸与されます。

現在の盲導犬数


日本は昭和13年にアメリカの盲人 J.ゴルドンがシェパード犬のオルティー号を連れて観光旅行に来日したのが最初で、翌昭和14年には4頭の盲導犬が輸入されました。昭和32年には国産第1号の盲導犬が誕生、2012年3月末時点で1,043頭の盲導犬が活躍しています。

山岳救助


ヨーロッパの山岳地帯で道に迷った旅行者の救護にはセントバーナードなどの大型犬が利用され、雪崩や地すべりで雪に埋もれた人間を救出する活動などをしました。

スイスとイタリア国境のサン・ベルナール修道院で飼育されたバリー(セントバーナード)は、40の人命を救ったことで有名です。ただ残念なことに、バリーは41人目の遭難者に熊と間違えられて射殺され、現在ベルンの博物館にはく製保存されています。

海難救助


海難救助ではニューファンドランド犬の活躍が知られています。ニューファンドランド犬は指の間が水かき状になっており、きわめて水泳が巧みな犬種です。

昨今でも大型タンカーの甲板上で乗組員の転落事故に備え飼育される例が見られます。

フランスの画家、ランドシーアの絵画の中に、黒と白のニューファンドランド犬の海難救助の光景を描いたものがあり、その画以後、この毛色のニューファンドランド犬は「ランドシーア」と呼ばれるようになりました。

エスキモーと犬


北極地帯のエスキモーたちと生活を一にする「そり犬」たちは、吹雪の中でも進路を見失うことなく、また危険を予知する能力も持っています。エスキモーの生活は、このそり犬がいなくては成り立ちません。そり犬は南極や北極探検でも用いられ、輝かしい業績を上げています。

そり犬には、四肢が強靭な大型の犬種、サモエド、アラスカン・マラミュート、シベリアン・ハスキーなどが適しています。

先導犬


先導犬はその地位を人間からも認められ、最初に食事を与えられるなどリーダーにふさわしい待遇で扱われました。そり犬の先導犬の責務は重く、そのポジションは名誉ある地位です。チームの中で戦いによってその地位を得、戦いに破れてその地位を去ります。

番犬としての犬


犬が番犬として人間のために役立つのは、並はずれた警戒心を持つと同時に、主人や味方と外敵を識別する能力を持つからです。犬は本来、自分の生活圏(テリトリー)を設定し、これを守る意識が強く、生理的に見張り番としての能力を備えています。

この本能は、番犬として古くから人間のために利用されており、家庭の番をはじめ、工場、倉庫、遊園地、森林、空港等の警備にも犬が利用されています。

ローマ時代には、犬によろいを着せ首回りに刃物を付けて軍用に使用していましたが、現在でも各国の軍隊でパトロール、国境警備、捜索等の目的に多くの犬が飼育されています。

一般社団法人国際家庭犬トレーニング協会
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