適応機制(その1)

「適応機制」とは精神分析で用いられる心理学用語であり、不適応な状態に陥ってしまった情緒感を解消するための意識活動や行動のことを言います。

これは人間の心が緊張や不安、欲求不満などの不快な感情によって「適応ができない状態」に陥った時に、無意識的に用いられる自我の再適応のメカニズムです。つまり、欲求が満たせない状況で、自我を守り欲求不満を回避するために、心理的な安定を維持して危機的状況を乗り越えようとする心の仕組みなのです。

ペットロス状態にある相談者の心理状態を理解するために、カウンセラーがこのメカニズムについて知っておくことはカウンセリングに大いに役立つでしょう。



適応機制は、一時的に意識の連続性と平衡を保つ「心の安全弁」と考えることができますが、必ずしも万能なものではありません。適応機制が働き続けることによる心の負荷は大きく、やがて心理的な安定を保てなくなると「心の病」に発展することがあるのです。

適応機制の現れ方には個人差(癖)が見られ、これを分析することがカウンセリングの主要な手法となっています。

適応


「適応」とは、自分の欲求を満たすために環境に対して適切な働きかけを行うことができ、また環境からは肯定的な反応や評価が与えられ、安定した共存的関係性が維持されている状態を言います。

自然、社会、組織、家庭などで生じるさまざまな変化に対し、「個」としての自分が適切に反応し、有効な働きかけを行える関係 (外的適応状態) を維持することは重要なことと考えられます。

さらに、個としての自分が社会や組織から肯定的に評価され、調和のとれた社会生活を営む(内的適応状態)ことが理想と言えます。

不適応(適応障害)


「不適応」とは、自分と社会環境、または自然環境との間に不調和な関係性が持続する状態のことで、社会環境、または自然環境などで生じるさまざまな変化に対し、個としての自分が適切で有効な対応、または働きかけができないために、社会環境、自然環境との関係性が否定的に評価されてしまい、自分も心理的安定や充足感をもてない情緒不安定な状態のことを言います。

しかし、個人の側だけでなく、社会の側が著しく歪んでいる場合もあり、必ずしも「適応が望ましく、不適応は望ましくない」と言うものでもありません。また、いかなる社会も個人にとって部分的な不適応は避けられないものと言え、それが返って人格の形成に有益であるとする考え方も存在します。

適応機制の仕組み


すべての人間には、本能的欲求が噴出する心の深層があり、その本能的欲動から、自我が身を守ったり活用したりする方法が「適応」という形で現れます。精神分析学の定義においては、あらゆる本能的欲動を自我が管理する方法が「適応」です。

適応は、人間が否認したい欲求や、不快な欲求から身を守る手段として用いられます。

人間は各種の適応機制によって、意識の連続性と平衡を保っています。人間は常に欲動に適応しており、人間のあらゆる行動は本能的欲動に適応した結果として表現されています。人間の文化的活動や創造的活動も、全て本能的欲動に適応した結果であり、その変形に過ぎません。

健全な人間であれば、適応は現実的に処理されるものですが、精神的な病をもつ人は、適応機制が歪んだ形で働くことになります。

広義においては人間の本能的衝動をコントロールする全ての操作は適応機制です。また、欲求不満に対して積極的に正面から取り組むことは「合理的機制」と言います。


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