障害飛行は、基本的には80cm(体高の約1.5倍まで)の障害を越えるトレーニングです。
一般家庭で飼育される犬にとっては、自分の意志で物を飛び越える必要はほとんどないと言えるでしょう。飼育者側でも、犬にものを飛び越えさせる必要性は、通常では見当たらないでしょう。
しかし警察犬など、特殊な現場で働く犬には必要な訓練です。警察犬が歩く道は常に平坦とは限らず、また、人が入れないような場所に犬が先に入らなければいけないような場合もあるため、警察犬にとって「障害」を使った訓練は必要不可欠なのです。
家庭犬における「障害飛越」の目的
そのような特殊な任務を持たない犬にとっての、このトレーニングの目的は、単に障害物を飛び越えることの実成果よりも、むしろトレーナーの命令に対しての服従性、かつ勇猛果敢な精神を育成することにあります。
また、昨今アジリティ競技(障害物競走)が英国を含め、あらゆる国で盛んにおこなわれるようになっており、この目的のために生涯飛越科目のトレーニングの必要性は高まってきています。
トレーニングの開始時期
トレーニングは、生後6か月を経過した後に開始します。成長期の犬では、股関節をはじめとする後肢骨格(特に寛骨結合)が未発達で、無理な飛越は骨格の健全な発達の障害となるからです。
障害飛行の視符と声符
障害飛行の視符は、トレーナーが飛び台の右側に位置し、右手を左股から斜め右上方に上げます。
声符は「トベ」です。
トレーニング方法
①犬が容易に飛び越せる高さ(約50cmから始める)の飛び台を作り、トレーナーはリードを短く持ち、ともに助走しながら「トベ」の声符を発し、犬とともに飛び越えます。
②犬が飛び台の前ですくんだり逃げ出した時は、飛び台を低くするか、リードを吊り上げ強引に飛越させます。
③これを何回も繰り返し、犬自身が進んで飛び越す様子が見られたら、トレーナーは飛ぶ瞬間に身をかわし、犬だけを飛越させます。
犬は目的物の高さと助走のスピードによって微妙に踏み切りのタイミングを決めますから、一定の高さに達した段階以降は、トレーナーはリードによって犬を制御することは避けなければなりません。
④初期には犬とトレーナーが飛び台を挟んで向き合い、声符とともにリードを引いて犬を呼び寄せるように越えさせる方法も採用できます。越えてきた犬とそのまましばらく走ってやることも、犬を励ますことになります。
⑤このトレーニングは、無理のない高さから繰り返し行い、出発点で声符と視符を与えるのみで飛び越えるようになるまでトレーニングします。命令どおり飛び越えたら充分に褒め、愛撫します。
飛び台の高さをだんだん高くしていき、踏み切りのタイミングを習得させます。急に高くして一度失敗をさせると、犬が恐怖感を持つようになり、以後のトレーニングが継続しなくなるので注意が必要です。もし失敗をさせた場合には、安心できる低さまで戻し、徐々に現状まで回復するように努めなければなりません。
完全にマスターできたら、往復の飛越を指導し、さらに連続の飛び台を飛越するトレーニングも行います。
トレーナーがどの位置にいても、飛び台を示し、声符を与えれば飛越するようトレーニングを重ねます。
⑥このトレーニングは「物品持来」との組み合わせによって、より高度な科目となります。
トレーナーは飛び台から距離をおき、犬を脚側停座させ、ダンベルを犬に示し、飛び台を超えるように投げ、「モッテコイ」を命じ、往復飛越してダンベルを持来させます。
一般社団法人国際家庭犬トレーニング協会
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