AKCの7犬種グループ(テリア・愛玩犬など)

アメリカン・ケネルクラブ(A K C)では、犬種を、基本的にイギリスのケネル・クラブ(KC)の分類区分を踏襲した上で、7つのグループに分類しています。ここでは4番目以降のグループ(テリア、愛玩犬、非鳥猟犬、牧畜犬)について述べます。


④テリア・グループ(テリア)


テリアは、もともとはイギリスの諸島部で土中や岩穴に棲息している狐や穴熊、ウサギ、野鼠、カワウソ、イタチ、モグラなどの小害獣を駆除するために利用された犬種で、テリアとはラテン語で「土を掘る」という意味です。

テリア犬種が獲物を巣の奥に追いつめ、猟師はスコップで掘ったり、煙でいぶり出すことにより獲物を得ることができました。

テリア種はスカイ・テリア、ダンディ・ディンモント・テリア、スコティッシュ・テリアなど短肢長胴の短肢テリアと、工アデール・テリア、フォックス・テリア、ペドリントン・テリアなど長肢短胴の長肢テリアに分けられます。

キング・オブ・テリアと呼ばれるエアデール・テリアを除いて、テリア種は小型のものが多く、ドイツのミニチュア・シュナウザーを除いてほとんどのテリアがイギリス原産です。また現在テリア種は、一部の実猟犬を除くほとんどの国で愛玩犬に近い存在となっています。

⑤トイ・グループ(愛玩犬)


「トイ・グループ」という犬種区分は、その範囲が必ずしも明確ではありません。現代では、 一般家庭で飼育されているすべての犬が愛玩犬であると考えることもできるからです。

けれど、そもそも人類が犬を飼育し始めた目的が「愛玩」だったとは考えにくく、狩猟の手伝いや番犬など、もっと実利的な目的があったはずです。その後、犬との共同生活の中で人間側が次第に愛玩の心情を持つに至ったと考えるのが自然です。

トイ ・グループに含まれる犬種は各原産国の文化、 風土に適応し発達した珍しい小型犬が多いといえます。また、トイ・グループにはトイ・プードル、イタリアン・グレーハウンド、トイ・マンチェスター・テリアなど、本来は大型の犬種を小型に改良した犬が多く含まれています。

日本では、愛玩犬とは一般に 「小型の室内飼育犬」を意味する事が多いのですが、欧米では大型犬といえども室内で飼育されるのが普通ですから、犬のサイズによる分類と考えるのも正しくはありません。

日本では古くから、俗に「御三家」と言われるマルチーズ、ポメラニアン、ヨークシャー・テリアなど、小型愛玩犬種が人気犬種となっていますが、狩猟民族である欧州や住宅事情に恵まれた米国では、大型犬種が常に上位人気犬種となっています。

⑥ノン・スポーティング・グループ(非鳥猟犬)


ノン・スポーティングとは、狩猟が盛んな時代に、犬の能力を「鳥猟に使えるか」「使えないか」で分別した時の名残りの名称です。

現在ではスポーティングを含む他の6犬種に分類できない犬種を総称してノン ・スポーティングと呼んでいます。このため体格の大小、形態がさまざまの犬種グループで、コンパニオン・グループと呼ばれることもあります。イギリス (KC) では、このグループの犬種をユーティリティ (実用犬グループ) と呼んでいます。

プードルのように、過去は猟犬であってもすでに猟欲を失った犬種や、大型犬であってもチャウ・チャウ、ダルメシアンのように使役に用いられない犬種を含んだグループです。

犬と猛獣、犬と犬の闘技は古い時代には人気の高い見せ物で、そのために改良された犬もあります。例えばプルドッグは、牛の首にかみついた状態でも息ができるよう改良されました。

このグループには、貴族や宮廷で愛玩されるために繁殖が続けられて来た犬種も多く、犬種の分類は容易な作業ではなく、犬の用途そのものが国によって異なるために、アメリカのノン・スポーティング、イギリスのユーティリティには、便宜的に編入されたと考えられる犬種も多くいます。

⑦ハーディング・グループ(牧畜犬)


工業化以前のヨーロッパでは、牧畜は主要な産業のひとつで、牧羊犬は欠くことのできない存在でした。しかしならが、草原や山岳地帯を中心に行われてきた牧畜業は、常に多くの種類の外敵や強奪者たちの攻撃にさらされてきました。そこでは、鋭い嗅覚や聴覚を利用して家畜群を監視する牧羊犬が重要な役割を果たしました。

牧羊犬は、長い年月を経て訓練され、服従性の高い優れた誘導能力を持っています。

牧羊犬の行動はほとんど本能的なもので、通常2頭の犬が一対となり、100頭以上の羊を監視します。1頭が主人から離れる時は他の1頭が主人の足元にいて指示を待ちます。

羊は臆病なため犬を恐がり、犬が近くに来ると逃げます。犬は、危険を感じるとーつの群れにまとまる羊の性質を良く理解しており、どうしても群れに戻らない羊や、進む方向が違っている時には、犬は羊のもものあたりに軽く咬みつきます。

このように、牧舎から牧草のある場所へ誘導して放牧し、再び群れにして牧舎にもどすまでの、機械化することのできない作業を牧羊犬がこなしたのです。

しかし残念なことに、牧畜に従事する人々の地位は決して高くなく、その結果、その下で働く牧羊犬が脚光を浴びることはありませんでした。王侯貴族の庇護のもとに発展してきた鳥猟犬やハウンドに比べると、不遇な扱いに甘んじて来た犬種グループと言わねばなりません。

現在牧羊犬として活躍している犬種は、ボーダー・コリー、シェルティ、オーストラリアン・キャトル・ドッグ、オーストラリアン・ケルピーなどで、いずれもスピッツ型の特性を継承する、テリトリーの防御意識が強い犬種です。

「シェパード」とは羊飼いの意で、ジャーマン・シェパードはドイツで作出された牧羊犬です。ジャーマン・シェパードは、AKC以外ではワーキング・グループに分類されています。

ハーディング・グループは1983年AKCによりワーキング・グループから牧畜犬種を独立させて1グループとしたものですが、グレート・ ピレニーズ、コモンドール、クーパースなど牧羊犬として実績のある犬種がハーディングに分類されず、ワーキングに留まっています。


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